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高度専門職で申請中に転職・退職!?永住審査への影響と注意点

作成者: FESO|Jun 2, 2025 7:24:09 AM
 

 質問内容)

①相談種別:永住者
②申請種別:普通永住(高度専門職からの)
③状況概要: はじめまして、行政書士の先生。私はインド国籍のラジブ・メノン(35歳)と申します。現在、日本のIT企業で働いており、高度専門職1号(ロ)ビザを保有しています。日本に滞在して3年が経ち、ポイントも80点以上あるため、永住ビザの申請を検討しています。 永住の条件は満たしているはずなので、早めに申請したいと思っているのですが、実は申請中に別の会社への転職を考えています。また、将来的に独立して個人事業主になることも視野に入れています。


④質問: 高度専門職1号ビザで永住申請の条件を満たしており、これから申請を予定しています。しかし、永住申請中に転職や退職の予定がある場合、永住審査にどのような影響がありますか?また、その際に特に注意すべき点があれば教えてください。

 

回答)

ラジブさん、この度は永住ビザ申請のご検討、そして申請中の転職・退職に関するご質問、ありがとうございます。高度専門職ビザをお持ちの方で、永住申請中にキャリアプランの変更を考える方は少なくありません。非常に重要なポイントですので、詳しく解説させていただきます。

1. 永住申請中の転職・退職が審査に与える影響

結論から申し上げますと、永住申請中に転職や退職(独立して個人事業主になる場合を含む)は、審査に影響を与える可能性があります。 ただし、その影響は、変更の内容や、適切に手続きを行うかどうかによって大きく異なります。

永住許可は、日本での安定した生活基盤と、将来にわたる継続的な生活の安定性が重視されます。特に高度専門職からの永住申請では、申請時のポイント基準に加え、その後の安定した活動も評価の対象となります。

転職の場合(技人国の場合の一般的な考え方)

  • 影響の可能性:活動の安定性・継続性の評価: 

転職先の業務内容や収入が、永住申請時に提示した内容と大きく異なる場合、安定性・継続性について入管が疑問を持つ可能性があります。

  • 企業カテゴリーの変化: 転職先が永住申請の要件を満たさない企業カテゴリー(例:カテゴリー3や4)である場合、審査が厳しくなることがあります。
  • 再提出書類の発生: 転職先の会社の情報(登記簿謄本、決算書など)や、新しい雇用契約書などの提出を求められ、審査が長期化する可能性があります。
  • 適切な対応:「契約機関に関する届出」の提出: 

転職先の企業が決まり、実際に勤務を開始したら、14日以内に出入国在留管理局に「所属機関に関する届出」を提出する義務があります。これは、在留資格を問わず、転職した際に必ず行わなければならない手続きです。

  • 審査への影響を最小限に抑える: 転職先の業務内容が、現在の在留資格(技術・人文知識・国際業務)の活動範囲内であり、かつ収入が維持または向上する場合、審査への悪影響は比較的小さいと考えられます。

転職の場合(高度専門職1号の場合)

高度専門職1号は、所属機関(現在の会社)との関係において許可されているものです。従いまして転職した場合は、新たな雇用主企業において活動する内容と入社後の見込み年収を証明してもらい入国管理局に対して高度専門職1号(ロ)から高度専門職1号(ロ)への在留資格変更許可申請を行って許可をいただかなければなりません。高度専門職1号は、原則10年に関する特例として「高度人材外国人」として必要な点数を維持して3年以上継続して本邦に在留していることの条件を使って申請となりますので、在留資格変更許可申請が許可されなければ永住申請自体、出来ないことになります。

退職(独立して個人事業主になる場合)

  • 影響の可能性:
    • 在留資格の変更の必要性: 個人事業主として活動する場合、現在の「高度専門職1号(ロ)」ビザでは活動できないケースがあります。原則として「経営・管理」または「高度専門職1号(ハ)」ビザへの変更が必要となります。
    • 「経営・管理」ビザへの変更と永住審査: 「経営・管理」ビザは、事業計画の実現可能性や安定性が厳しく審査されます。永住申請中に在留資格が変更となること自体が、審査を複雑にし、長期化させる可能性がありますのでおすすめではありません。
    • 安定した生計の証明: 個人事業主の場合、会社員に比べて収入の安定性を証明することが難しくなることがあります。事業計画書や銀行口座の残高、納税状況などをより厳しく見られるでしょう。
  • 適切な対応:
    • 事前に綿密な計画: 独立を検討している場合は、永住申請を行う前に、事業計画を具体的に練り、独立後の「高度専門職1号」および「同2号」ビザの要件を十分に満たせるかを確認することが重要です。
    • 永住申請と在留資格変更のタイミング: 永住申請が許可されるまで現在の会社員としての活動を続けるか、または永住申請前に独立を完了させ、「高度専門職1号」ビザで永住申請を行うかなど、慎重なタイミング戦略が必要です。

2. 高度専門職からの永住申請の特性と注意点

高度専門職ビザをお持ちの場合、永住申請の居住要件が短縮されるという大きなメリットがあります(3年または1年)。しかし、永住審査では、その優遇措置の根拠となった高度な活動が、申請後も継続しているかどうかが確認されます。

特に注意すべき点は以下の通りです。

  • 申請時のポイントの維持: 永住申請の際には、高度専門職ビザのポイントが80点以上であることを証明しますが、許可されるまでそのポイントが維持されているかどうかが確認されます。転職により収入が大幅に減少したり、業務内容が高度専門職の範囲から外れたりすると、ポイントが下がり、永住許可に影響が出る可能性があります。
  • 「高度外国人材としての活動継続性」: 永住ビザは、日本にとって有益な人材に与えられる許可です。そのため、申請後も引き続き日本社会に貢献する高度な活動を継続していることが求められます。転職や独立が、この「高度な活動の継続性」を損なうものでないことを明確に説明する必要があります。
  • 届出義務の徹底: 転職、退職、または個人事業主としての活動開始など、在留資格に関する変更があった場合は、速やかに入国管理局に届け出ることが義務付けられています。この届出を怠ると、永住申請に悪影響が出るだけでなく、罰則の対象となる可能性もあります。

3. 最善の戦略

ラジブさんの状況で最も推奨される戦略は、以下のいずれかになるでしょう。

  1. 永住申請が許可されるまで、現在の安定した企業での活動を継続する: これが最もリスクが低い選択肢です。永住ビザが許可されてから転職や独立を検討することで、審査への影響を気にせず、スムーズに手続きを進められます。
  2. 高度専門職2号への変更を経て永住申請をする。2号は相談者様が転職した場合でも同1号(ロ)のように、在留資格変更許可申請は不要です。所属機関(雇用主)によって、在留資格の変更は必要ないため、80ポイントを1年以上保持し、証明できるなら申請計画としては実践的で効率的です。
  3. 転職を予定している場合は、永住申請を行う前に転職を完了させ、新しい会社から活動する内容と入社後の見込み年収を証明してもらい永住申請を行う: これにより、申請時点で既に新しい職場での安定性を示すことができます。ただし、転職に際しの在留資格の変更手続き(もし必要であれば)を先に行う必要があります。
  4. 独立を検討している場合は、永住申請を行う前に「高度専門職1号(ロ)or(ハ)」ビザへ変更し、個人事業主としての事業実績を積んでから永住申請を行う: 個人事業主として永住申請を行う場合、業務委託契約先との契約内容や実態を証明する書類が必要になります。これは、時間と労力がかかる選択肢です。

まとめとアドバイス

永住申請中の転職や退職は、審査に影響を与える可能性があるため、慎重な判断と対応が必要です。

  • 最も安全なのは、永住許可が下りてからキャリアプランを実行することです。
  • やむを得ず申請中に転職や退職を行う場合は、必要に応じた在留資格変更許可申請を行うこと、そして変更後の活動が引き続き「安定性」「継続性」「高度性」を満たしていることと過去のポイント証明と将来の「見込み年収」を証明することが重要です。
  • 特に個人事業主への独立は、「経営・管理」ビザへの変更が必要となり、永住審査もより複雑になるため、事前の綿密な計画と準備が不可欠です。

ラジブさんの状況は複雑であり、個別の事情や最新の入管の運用状況によって最適な選択肢が異なります。ぜひ、私たち行政書士のような入管手続きの専門家にご相談いただき、現状を正確に分析し、最も安全かつ効率的な永住申請の戦略を共に立てていくことを強くお勧めします。