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永住申請に扶養者3名で年収500万円は不足?

作成者: FESO|Jul 3, 2025 4:34:37 AM
 

 質問内容)

①相談種別:永住許可申請

②申請種別:永住許可

③状況概要: はじめまして、行政書士の先生。私は中国籍のリュウ(38歳)です。現在、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格(在留期間3年)で日本に滞在しています。年収は過去5年間、ずっと年間504万円で安定しています。

④質問: 家族は私を含めて4人、妻と子供が2人います。年収504万円で扶養者が3名いると、永住許可申請に必要な年収レベルが足りないのではないかと心配しています。この状況でも、永住許可申請をする余地はありますでしょうか?もし不足している場合、申請にあたり、年収レベルの不足をカバーできるような理由書の書き方や、他にどのような対策が取れるか、アドバイスをいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。


 

回答)

ご相談ありがとうございます。年収504万円で扶養者が3名いらっしゃる状況での永住許可申請について、ご不安な点をお持ちのことと存じます。結論から申し上げますと、この年収レベルと扶養人数であっても、永住許可申請をする余地は十分にあります。 ただし、いくつかのポイントと対策を講じることが重要です。

 

1. 永住申請における「生計要件」の考え方

永住許可の要件の一つに「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」があります。これは、申請者(とその扶養家族)が、今後も安定して日本で生活していける経済力があるか、国や地方公共団体に頼らずに生活できるか、という点を審査するものです。

明確な「〇人家族で〇円以上の年収が必要」という公式な基準は公表されていませんが、一般的には、単身者で年収300万円程度、扶養家族がいる場合は、その人数に応じて追加で年収が必要とされています。ご提示の年収504万円で扶養者3名の場合、一人当たりの年収に換算すると厳しいという見方もできますが、これはあくまで目安であり、総合的な判断がなされます。

 

2. 年収レベルが不足する場合でも申請する余地がある理由

たとえ目安とされる年収に届かない場合でも、申請する余地があるのは以下の要素も考慮されるからです。

  • 安定性・継続性: 過去5年間、年収504万円が安定して継続している点は非常に有利です。一時的な高収入よりも、安定性が重視されます。
  • その他の資産: 預貯金、不動産、有価証券など、年収以外の資産も生計能力を判断する上で考慮されます。
  • 家計状況: 家族の支出状況(家賃、教育費など)によっては、年収が少なくても十分に生活できていると判断されることもあります。
  • 納税・社会保険の履行状況: 公的義務をきちんと果たしていることは、永住許可の必須要件であり、かつ生計能力の安定性を示す重要な要素です。
  • 配偶者の就労可能性: 扶養に入っている配偶者にも就労の意思や能力がある場合、将来的な世帯収入の増加が見込まれるとして考慮されることがあります。

あくまで、審査は総合衡量されます。

 

3. 年収レベルをカバーし得る対策と理由書の記載

年収レベルが不足すると懸念される場合でも、それを補うための対策と、理由書での説得力のある説明が非常に重要です。

(1) 生計能力を補完する客観的資料の提出

年収以外の資産や、将来的な収入増の可能性を示す資料を積極的に提出します。

  • 預貯金残高証明書: 夫婦合算で、まとまった預貯金があることを証明します。できれば、直近数年間の預貯金通帳のコピーも添付し、残高が一時的なものではないことを示しましょう。
  • 不動産等の資産証明: 日本国内または本国に不動産を所有している場合、その登記事項証明書や評価額を示す書類を提出します。
  • 配偶者の就労予定・能力の証明:
    • 配偶者が日本での就労資格(例:「日本人の配偶者等」や「定住者」など)を持っている、または取得見込みである場合、就労の意思や能力を具体的に示します(例:日本語能力試験の合格証、資格・免許、職務経歴書など)。
    • 内定がある場合は、内定通知書や雇用契約書を提出します。
    • 理由書には、配偶者が今後どのように世帯収入に貢献していく予定か、具体的な計画を記載します。
  • 親族からの経済的支援: 本国の親族から定期的な送金がある場合や、緊急時に支援を受ける体制がある場合、その事実を証明する書類(送金記録、支援に関する誓約書など)を提出します。

(2) 理由書での説得力のある説明

理由書は、単に事実を羅列するだけでなく、審査官が納得できるようなストーリー論理的な説明を展開することが重要です。

  • 生計維持能力の具体的な説明:
    • 「年収504万円で扶養者3名でも、日本での生活に支障がないこと」を具体的に説明します。例えば、家賃が比較的低い、生活費を節約する工夫をしている、特別な高額な出費がない、など。
    • 「現在及び将来にわたり、扶養家族を含め安定した生活を送ることが可能である」という点を強調します。
    • 給与以外の安定収入(例:不動産収入、投資収入など)があれば、それも詳細に記載します。
  • 預貯金・資産の役割:
    • 「年間収入と合わせて、十分な預貯金を有しており、急な出費や万一の事態にも対応できる経済力がある」ことを説明します。
    • 「これらの資産は、今後も家族の生活を支えるための安定的な基盤となる」ことを強調します。
  • 家族の協力体制:
    • 「家族全員で協力し、倹約に努めながら堅実な生活を送っている」ことを説明します。
    • 「配偶者も日本語能力が高く、将来的には就労して世帯収入に貢献する意欲がある」など、具体的な計画があれば記載します。
  • 納税義務の履行状況の強調:
    • 年金・社会保険・税金の納付状況は永住の必須要件であり、これを完全に履行していることは、生計要件の信頼性を高めます。理由書でも、これらの公的義務を真摯に果たしてきたことを強調しましょう

 

4. リュウさんへのアドバイス

リュウさんには、以下の点をご説明し、対応を進めていただくことをお勧めします。

  1. 経済状況の「見える化」:
    • まずは、過去5年間のご自身の年収、世帯収入、預貯金額、固定資産などをリストアップし、家計の状況を正確に把握してください。
    • 毎月の収支表を作成し、年収504万円でも扶養家族3名で問題なく生活できていることを具体的に示せるように準備しましょう。
    • 資料として月の世帯家計簿などを数ヶ月分添付することも有効です。
  2. 公的義務の完璧な履行:
    • 社会保険(年金、健康保険)や税金(所得税、住民税)に未納がないことを確認し、もしあれば速やかに全額納付してください。
    • それらの納付を証明する書類(年金ネットの履歴、健康保険料領収証、納税証明書、課税証明書など)をすべて揃えましょう。
  3. 配偶者との連携:
    • 配偶者の方が日本で就労する意思がある場合、日本語学習の継続や、就職活動の開始などを検討してください。その努力自体も、ビザ申請において好意的に評価される可能性があります。
  4. 詳細な理由書作成の重要性:
    • 上記で述べた「生計能力の補完要素」を、具体的な数字やエピソードを交えながら、説得力のある理由書としてまとめましょう。ご自身で作成が難しい場合は、行政書士に相談してください。
  5. 専門家への相談:
    • 永住申請は、申請者の状況や提出書類によって審査結果が大きく左右される専門的な手続きです。特に、生計要件に懸念がある場合、経験豊富な行政書士に相談することで、許可の可能性を最大限に高めることができます。
    • 行政書士は、リュウさんの状況を正確に分析し、必要な書類の選定、理由書の作成、入管への提出代行など、一貫してサポートが可能です。

年収の数字だけにとらわれず、ご家族全体での安定した生活基盤と、日本社会への貢献意欲を総合的にアピールすることで、永住許可の道は開けます。どうぞ諦めずに、私たち専門家にご相談ください。