
質問内容)
①相談種別:永住者
②申請種別:永住許可
③状況概要: ブラジル国籍のダニエル・シルバ(28歳)です。日本人の妻(27歳)と結婚して3年が経ち、現在「日本人の配偶者等」の在留資格で4年目を迎えています。 私は日本の大学院で、妻は日本の大学でそれぞれ研究・勉強をしており、夫婦ともに現在無職です。私たちの生活費や学費は、それぞれの両親からの援助で賄っています。 永住権の取得を検討しているのですが、夫婦ともに収入がないため、「安定した生計」という要件を満たせるのかどうか不安です。
④質問: 夫婦ともに学生で収入がない場合でも、親からの援助で生活している状況で永住許可申請は可能でしょうか?また、申請にあたり、どのように生計の安定性を証明すれば良いでしょうか?
行政書士からの回答)
ダニエルさん、この度はご相談いただきありがとうございます。日本人配偶者と結婚され、ともに日本の大学で学ばれているとのこと、素晴らしいですね。夫婦ともに学生で収入がない場合の永住申請について、ご不安なことと存じます。この点は、永住許可の審査において非常に重要なポイントですので、詳しく解説させていただきます。
1. 永住申請における「安定した生計」要件の考え方
永住許可の要件の一つに「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」があります。これは、申請者(とその家族)が、今後も安定して生活していける経済力があるか、国や地方公共団体に頼らずに生活できるか、という点を審査するものです。
結論から申し上げますと、夫婦ともに学生で無収入であっても、永住許可申請は可能です。 この場合、年収以外の要素、特に「預貯金」や「不動産」などの資産をどれだけ説得力のある形で証明できるかが、許可の鍵となります。
2. 収入がない場合に永住申請を成功させるためのポイント
年収がない場合でも、生計の安定性を証明するために以下の点を総合的にアピールする必要があります。
(1) 経済的基盤の証明
- 預貯金: 夫婦合算で、将来にわたって安定した生活を送るのに十分な預貯金があることを証明します。単身者の場合よりも、夫婦二人分の生活費を考慮した金額が求められます。預金残高証明書を提出することで、経済的な基盤が安定していることを明確に証明できます。
- 不動産:登記簿謄本により資産の証明を行います。また収益を生む物件であれば、賃貸借契約書、入金のある通帳写し、確定申告書、所得税納税証明書なども提出することになります。
- 親族からの援助: 独立政権要件は、日常の生活において公共の負担になっておらず、かつ、その者の職業又はその者の有する資産等から見て将来において安定した生活が見込まれることを言います。そのため親族からの援助はあくまでも補強的な意味合いが強く、「自活」すなわち、その者が親をはじめとした周囲の人間の援助を受けずに生活を成り立たせることが出来る能力を永住者に対して求める条件としています。
- 親族からの送金証明書: 毎月、定期的に送金されていることを示す銀行の送金記録や、送金に関する誓約書を提出します。
- 援助者の経済力証明: 援助してくれている親の収入証明書や納税証明書を提出し、親に十分な経済力があることを示します。
(2) 将来の生活設計
- 卒業後の進路: 夫婦ともに学生であることは、いずれ卒業し、就職して安定した収入を得られる可能性が高いと判断されるため、マイナス要素にはなりません。
- 就職活動の状況: 卒業後の具体的な就職活動の計画や、就職先からの内定通知書(もしあれば)などを提出することで、将来的な生計の安定性を示すことができます。
- キャリアプラン: 卒業後にどのような分野で活躍し、どれくらいの収入が見込まれるのか、具体的なキャリアプランを説明することも有効です。
(3) 婚姻の安定性
- 婚姻の実態: 永住申請の審査では、夫婦関係が真実かつ安定していることが大前提です。
- 夫婦の協力体制: 夫婦ともに学生として互いを支え合い、将来に向けた努力をしていることを示すことで、夫婦関係が良好であることをアピールできます。
3. 申請にあたっての注意点と準備すべきこと
収入がないケースだからこそ、以下の点を最大限に準備し、慎重に対応する必要があります。
- 1.詳細な理由書の作成:
- なぜ学生である期間に永住申請を希望するのか、その理由を明確に説明します。
- 収入がないことに対する懸念を払拭するため、預貯金や親からの援助で生活が安定していること、卒業後の具体的なキャリアプランを詳細に記述します。
- 日本での生活への強い定着意思と、将来的には納税義務を果たし、日本社会に貢献していきたいという決意を丁寧に説明します。
- 2.経済的証明書類の充実:
- 預金残高証明書(夫婦合算)、親からの送金証明書、親の収入証明書(納税証明書など)など、経済的基盤を裏付ける書類を漏れなく提出します。
- 3.在留状況の善良性の証明:
- 夫婦ともに在留期間中、交通違反や犯罪歴がないこと、学生として学業に励んでいること(成績証明書、出席状況を示す書類など)を証明します。
- 永住申請は、過去5年間の公的義務の履行状況が確認されます。国民健康保険や国民年金に加入し、保険料を滞納なく納付していることを証明する書類を完璧に揃えましょう。
まとめとダニエルさんへのアドバイス
ダニエルさんの場合、夫婦ともに学生で収入がない状況でも、永住許可申請は可能です。
最も重要なのは、「年収がないこと」に対する懸念を払拭するため、潤沢な預貯金や資産の証明、そして卒業後の具体的なキャリアプランを説得力のある形でアピールすることです。
ご自身での申請も可能ですが、収入がないケースの永住申請は、通常の申請よりも審査が厳しくなる傾向があります。提出書類の作成、特に理由書の内容は、審査官の判断に大きな影響を与えます。将来に亘って安定的に生活を送ることが出来る専門スキルを身に付け、高い稼得能力と、その蓋然性を説得力のある書面でどれだけ示せるかが重要になります。又は、卒業して就職したのち、1年以上の就労実績を作ってから申請する方法など、許可に向けた段階的な計画を立てることが、必要かもしれません。
ご不安な場合は、ぜひ私たち行政書士のような永住申請の専門家にご相談ください。ダニエルさんご夫婦が安心して日本で生活できるよう、全力でサポートさせていただきます。
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