
質問内容)
①相談種別:ビザ
②申請種別:認定
③状況概要: はじめまして。相談者は山田(日本人男性)です。妻は中国籍で、現在中国にいます。以前、妻の日本人配偶者ビザの認定申請を自己申請で2度行ったのですが、いずれも不許可です。妻は過去に窃盗罪で5年間の上陸拒否期間があり、その期間が経過したので呼び寄せたいと考えている状況です。 1度目の申請では、過去の窃盗罪について申告せずに申請してしまい、それが不許可理由だと入管に言われました。2度目の不許可理由はまだ確認できていません。 私自身、精神的な病により最近休職しましたが、1年間は給与の8割が支給される見込みです。過去に心筋梗塞の経験もあり、妻に側にいてほしいと強く願っています。
④質問: 妻が過去の窃盗罪で上陸拒否期間を終えた後、2度も日本人配偶者ビザの認定申請が不許可になっています。私(夫)が精神的な病で休職中であることも影響しますか?このような状況で、3度目の認定申請を試みる場合、どのような筋道で進めるのが良いでしょうか?また、他に許可の可能性を高める方法はないでしょうか?
回答)
ご質問ありがとうございます。日本人配偶者ビザの認定申請において、妻の過去の上陸拒否歴と2度の不許可、そして山田さんの体調不良という、非常に複雑でデリケートな状況でお悩みとのこと、心中お察しいたします。このような状況での申請は、専門的な知識と丁寧な対応が不可欠となります。
1. 過去の上陸拒否歴と不許可について
まず、妻の過去の窃盗罪による上陸拒否歴と、1度目の申請でそれを申告しなかったことは、審査において非常に大きなマイナス要因となります。
- 「上陸拒否期間」の経過: 上陸拒否期間が経過したからといって、自動的に日本への入国が許可されるわけではありません。過去の犯罪歴や入国拒否の事実そのものは、永続的に審査に影響を与えます。特に「素行が善良であること」を求める日本人配偶者ビザの審査では、過去の犯罪歴は厳しく評価されます。
- 「不申告」のマイナス: 1度目の申請で窃盗罪について申告しなかったことは、入管に対して「真実を告げない、隠そうとしている」という印象を与え、信頼性を著しく損なう行為となります。これは、今後の申請においても非常に不利に働く可能性があります。
- 2度目の不許可理由の確認の重要性: 2度目の不許可理由を正確に把握することは、今後の申請戦略を立てる上で最も重要です。入管に情報開示請求を行うか、ご自身で窓口に相談に行き、具体的な理由を聴取してください。これにより、何が足りなかったのか、どのような点が懸念されたのかを把握できます。
2. 夫の体調不良(精神疾患・休職)の影響について
夫が精神的な病で休職中であり、過去に心筋梗塞の経験もあるとのこと。妻に側にいてほしいという切実な願い、深く理解できます。
この状況は、ビザ審査において「生計維持能力」と「日本での生活基盤の安定性」という点で慎重に判断される可能性があります。
- 生計維持能力: 1年間は給与の8割支給が確保されているとのことですが、その後の見込みや、ご家族が増えた場合の生計計画について、具体的な説明が求められます。貯蓄額、医療費の見込み、ご家族のサポートの有無なども考慮されるでしょう。
- 生活基盤の安定性: 夫の病状が、今後の生活や妻が日本で安定して生活していく上で、どの程度影響を与えるのかが懸念される場合があります。
ただし、夫の体調不良が、妻を日本に呼び寄せる「人道的な理由」として考慮される可能性もゼロではありません。特に、妻が側にいることが夫の治療や回復に不可欠であるや、至って望ましいと医師が判断している場合は、その旨を明確に伝える必要があります。
3. 3度目の認定申請の筋道と突破口
2度の不許可があるため、3度目の申請は、過去の不許可理由をすべて払拭し、かつ、現在の状況を最大限に有利に説明する、非常に丁寧で戦略的なアプローチが不可欠です。
- 不許可理由の徹底的な解消:
- 過去の窃盗罪について: 単に「5年が経過した」だけでなく、妻が罪を深く反省し、更生していることを具体的な行動(例:ボランティア活動、反省文の作成など)で示し、貧困=窃盗といった観点から、その後の生活状況・経済状況が良好であることを証明する必要があります。過去の犯罪歴に関する詳細な記録(判決文など、可能な範囲で)と、それに対する深い反省の意を綴った詳細な上申書を提出します。
- 1度目の不申告について: なぜ申告しなかったのか、それが誤りであったこと、今後は真実のみを申告することを誓う旨を、妻と夫の双方から詳細な理由書(反省文)として提出します。
- 2度目の不許可理由: 入管から聴取した2度目の不許可理由を詳細に分析し、その懸念点を解消するための補強資料を準備します。
- 生計維持能力の強化と説明:
- 夫の休職中の収入だけでなく、復職後の見込み、貯蓄額、その他資産(不動産、有価証券など)、親族からの経済的援助の可能性など、夫婦が日本で安定した生活を送るための経済的基盤が十分にあることを、客観的な資料(預金残高証明書、納税証明書、課税証明書、不動産登記事項証明書、親族からの支援に関する誓約書など)で徹底的に証明します。
- 特に、休職中である現状を踏まえ、今後の生活設計について、具体的な計画と実現可能性を詳細に記した理由書を提出します。
- 婚姻の信ぴょう性の証明:
- 過去2回の申請でも婚姻の信ぴょう性について懸念があった可能性も考慮し、夫婦関係が真実であることを示す客観的な証拠を充実させます。
- 婚姻に至るまでの経緯、交際期間、プロポーズの状況、結婚式や新婚旅行の写真、夫婦での旅行写真、電話やSNSでのやり取りの履歴、互いの家族との交流を示す写真など。
- 親族や友人など、夫婦の関係をよく知る第三者からの保証書や推薦状も有効です。
- 人道的な理由の説明(医師の診断書など):
- 夫の体調不良が、妻が側にいることでどのように回復に繋がるのか、医師の診断書や意見書として具体的に記載してもらうことが非常に重要です。妻が精神的サポートを提供できること、家事や身の回りの世話ができることなど、具体的な貢献を示す必要があります。
- 専門家(行政書士)への依頼:
- このケースは、一般的な申請に比べて非常に複雑であり、個別の事情を細かく説明し、適切な補強資料を揃えることが不可欠です。自己申請での再度の不許可は、今後の申請をさらに困難にする可能性が高いです。
- 入管手続きに精通した行政書士は、過去の不許可理由の分析、説得力のある理由書や上申書の作成、必要な補強資料の選定、そして入管とのやり取りにおいて、大きなサポートを提供できます。
4. 特定活動ビザで申請し、許可が下りたら入国後に再度日配申請、の方向はどうか?
この「特定活動ビザで申請し、許可が下りたら入国後に再度日配申請」という方法は、理論上は考えられますが、極めてハードルが高いと言わざるを得ません。
- 定住者等の配偶者としての特定活動: 永住者や定住者の配偶者には「特定活動」ビザが認められるケースがありますが、これは通常、永住者や定住者と結婚したものの、何らかの事情で離婚するなど「日本人の配偶者等」ビザの要件を完全に満たせない場合に、子供の有無や稼得能力などを総合的に考慮して人道的な配慮として認められるものです。今回のケースで、妻が過去に上陸拒否歴がある中で、いきなり特定活動ビザが認められる可能性は非常に低いと考えられます。
- 「特定活動」から「日本人の配偶者等」への変更: 仮に特定活動ビザで入国できたとしても、その後「日本人の配偶者等」ビザへの変更申請を行う際にも、過去の犯罪歴や上陸拒否歴、生計維持能力などは再度厳しく審査されます。一度不許可になった理由が解消されていなければ、結局は変更も不許可になる可能性が高いでしょう。
したがって、まずは「日本人の配偶者等」ビザの認定申請に全力を注ぎ、徹底的に準備を尽くすことが、最も現実的かつ確実な道筋であると考えられます。
まとめ
妻の日本人配偶者ビザの取得は、過去の上陸拒否歴と2度の不許可、そして夫の体調不良という複合的な要因により、非常に困難な状況であることは間違いありません。しかし、夫の切実な思いや、妻が日本での生活に貢献したいという強い意志を示すことで、道が開ける可能性もゼロではありません。
このケースは、個別の事情を詳細に説明し、それを裏付ける客観的な証拠を最大限に揃えることが何よりも重要です。自己判断で申請を繰り返すことは、かえって事態を悪化させる恐れがあります。
ぜひ、この状況でこそ、私たち行政書士のような専門家にご相談いただき、現状を正確に分析し、最も効果的な申請戦略を共に立てていくことを強くお勧めいたします。