
質問内容)
①相談種別:在留資格
②申請種別:在留資格認定証明書交付申請(日本人配偶者等)
③状況概要: はじめまして。私は日本人の田中健二(40歳)です。現在、日本の会社からの海外赴任で、シンガポールに滞在しています。妻はフィリピン国籍のマリア(29歳)で、先日フィリピンで結婚したばかりです。私はあと2~3年ほど海外赴任が続く予定ですが、妻は先に日本へ移住し、日本の生活に慣れたい、日本語を勉強したい、そして就職活動も始めたいと考えています。妻が先に日本に入国し、私が日本に戻るのを待つ形で、「日本人の配偶者等」ビザを取得することは可能でしょうか?
④質問: 夫である私が海外赴任中ですが、フィリピンにいる妻が先に日本に入国し、「日本人の配偶者等」ビザを取得することは可能でしょうか?特に、夫婦が日本で同居していない状況でビザが許可されるのかどうか、不安に感じています。
回答)
田中様、この度はご結婚おめでとうございます。海外赴任中に奥様が先に日本へ移住し、「日本人の配偶者等」ビザを取得したいというご希望、よく理解できます。しかし、このケースは一般的な申請とは異なるため、慎重な対応が必要です。
1. 夫婦が日本で同居していない状況での「日本人配偶者等」ビザ申請の可否
結論から申し上げますと、夫である日本人配偶者が海外赴任中など、日本に生活の本拠がない状況で、外国籍の配偶者が単独で「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書を申請し、先に日本に入国することは、原則として非常に困難です。
「日本人の配偶者等」の在留資格は、夫婦が日本において同居し、互いに協力して安定した婚姻生活を営むことを前提としています。そのため、日本人配偶者が日本に生活の本拠を置いていない場合、この前提が崩れると判断される可能性が高いのです。
特に重視されるポイント
- 「日本における夫婦の生活の本拠」: 入管は、日本人配偶者が日本に「生活の本拠」を置いているか、つまり日本で住民票があり、税金を納め、社会保険に加入しているなど、実質的に日本で生活しているかどうかを重視します。田中様が海外赴任中である場合、現在は生活の本拠が日本にないと判断される可能性が高いです。
- 婚姻の信ぴょう性: 日本人配偶者が日本にいない状態で外国籍の配偶者のみが先に入国しようとすると、入管は夫婦関係の真実性や、日本で安定した婚姻生活を送る意思について、より慎重に審査する傾向にあります。
- 生計維持能力: たとえ田中様が海外で高収入を得ていたとしても、それが日本での生活費としてどのように充当されるのか、また、日本で生活する外国籍の奥様の具体的な生計維持計画が問われます。
2. 困難な状況での対応策と可能性
原則として困難ではありますが、以下のような状況や説明があれば、可能性がゼロではないケースも考えられます。
- a. 日本人配偶者の日本帰国が確実かつ明確な場合:
- 田中様が、具体的な帰国時期(例えば「〇年〇月には必ず日本に帰国します」といった会社の辞令など)が決まっており、それを客観的に証明できる場合。
- 帰国後、夫婦が日本で生活するための具体的な住居(賃貸契約済み、購入済みなど)が既に確保されている場合。
- この場合、奥様が先に日本に来て行う活動(日本語学習、就職活動準備など)が、夫婦の日本での生活準備として必要かつ合理的なものであることを具体的に説明する理由書を作成します。
- b. 一時的な滞在としての選択肢:
- 奥様が先に日本に来て生活に慣れたいというご希望であれば、まずは短期滞在ビザでの入国を検討することが考えられます。ただし、短期滞在は観光や親族訪問が目的であり、長期滞在を前提とした就職活動や住居探しには適していません。また、短期滞在ビザから「日本人の配偶者等」ビザへの変更は原則認められていません。
- c. 家族滞在ビザの検討(他の在留資格保有者の場合):
- もし、田中様が「技術・人文知識・国際業務」など、何らかの就労系の在留資格を日本で保持している場合(海外赴任中でも、日本の企業に籍があり、日本の在留資格を継続している場合など)、奥様が「家族滞在」ビザで日本に入国できる可能性も考えられます。ただし、「家族滞在」ビザは、扶養者(田中様)が日本に在留していることが前提です。
- もし、田中様が「技術・人文知識・国際業務」など、何らかの就労系の在留資格を日本で保持している場合(海外赴任中でも、日本の企業に籍があり、日本の在留資格を継続している場合など)、奥様が「家族滞在」ビザで日本に入国できる可能性も考えられます。ただし、「家族滞在」ビザは、扶養者(田中様)が日本に在留していることが前提です。
3. 最も現実的な申請戦略
現在の状況で最も現実的でリスクの低い申請戦略は、田中様が海外赴任を終え、日本に完全に帰国し、日本に生活の本拠を置いてから、奥様の「日本人の配偶者等」ビザを申請することです。
この場合、夫婦が日本で同居を開始し、生計を一つにしている実績を示すことができるため、ビザの許可の可能性が飛躍的に高まります。
まとめと田中様へのアドバイス
田中様、奥様が先に日本に来て生活を始めたいというお気持ちはよく理解できます。しかし、日本人配偶者が海外赴任中で日本に生活の本拠がない状態での「日本人の配偶者等」ビザ申請は、入管の審査において非常に厳しく判断されるケースです。
特に重要な点として、
- 日本人配偶者の日本での生活本拠の有無
- 夫婦が日本で同居し、安定した婚姻生活を営むことの証明
が挙げられます。
もし、現時点で奥様を日本に招くことを強く希望されるのであれば、田中様の具体的な帰国時期を明確にする、日本での住居を確保するといった具体的な準備を進め、その状況を詳細な理由書で説明することが不可欠です。
このケースは、一般的な日本人配偶者ビザの申請よりも複雑で、入管の裁量による判断が大きく影響します。ご自身での申請はリスクが伴いますので、私たち行政書士のような入管手続きの専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。 田中様ご夫妻が安心して日本で生活できるよう、私たちも全力でサポートさせていただきます。