
質問内容)
①相談種別: ビザ
②申請種別: 認定
③状況概要: はじめまして、マリア(74歳)と申します。私の父は米国人、母は日本人です。14歳まで日本で暮らしていましたが、その後家族で米国に移住しました。母の日本の戸籍には私の名前は記載されておらず、現在の国籍は完全に米国人です。母はすでに他界しています。
④質問: 長年離れていた日本へ移住したいと考えています。私は「日本人の子」にあたると思うので、在留資格「日本人の配偶者等」で申請できるのではないかと考えました。しかし、繋がりである母がすでに他界しているのですが、それでもこの在留資格を申請することは可能なのでしょうか?
回答)
マリア様、ご相談いただきありがとうございます。お母様が亡くなられている状況で、ご自身のルーツである日本への移住をご検討されているのですね。ご不安な点も多いかと存じますが、ご安心ください。結論から申し上げますと、お母様が他界されていても、日本への移住を実現できる可能性は十分にあります。
マリア様の場合、主に「日本人の配偶者等」または「定住者」という2つの在留資格が選択肢として考えられます。それぞれについて、詳しく解説させていただきます。
1. 「日本人の配偶者等」ビザの可能性について
まず、マリア様がお考えの「日本人の配偶者等」の在留資格についてです。この在留資格は、日本人の配偶者だけでなく「日本人の子として出生した者」も対象となります。
重要なのは、「申請時に親が存命であること」ではなく、「マリア様が出生した時に、お母様が日本国籍を有していたかどうか」という事実です。
したがって、お母様が他界されていても、マリア様が生まれた時にお母様が日本人であったことを公的な書類で証明できれば、この在留資格の要件を満たす可能性があります。
【証明のポイント】
- お母様の戸籍(除籍)謄本: お母様が亡くなられている場合、死亡の事実が記載された「除籍謄本」を取得します。これにより、お母様がかつて日本人であったことを証明します。
- 親子関係を証明する書類: アメリカの役所で発行されたマリア様の「出生証明書(Birth Certificate)」など、お母様とマリア様の親子関係を証明する公的な書類が必要です。
- 翻訳文の添付: 海外で発行された書類には、すべて日本語の翻訳文を添付する必要があります。
これらの書類で「出生時に日本国籍者であった母から生まれた」という事実を客観的に立証することが、申請の鍵となります。
2. もう一つの有力な選択肢:「定住者」ビザ
もし「日本人の配偶者等」の証明が複雑な場合や、より一般的なケースとして、「定住者」の在留資格を目指すという、もう一つの有力な選択肢があります。
マリア様は、お母様が日本人ですので「日系2世」に該当します。この「日系2世」であることは、「定住者」の在留資格が認められる典型的なケースの一つです。
こちらも「日本人の配偶者等」と同様に、お母様が日本人であったこと、そしてマリア様がその子であることを証明する必要がありますが、日系人としての在留資格申請は実務上も多く見られます。
3. どちらのビザでも重要となる「日本人の子であること」と「生計要件」
マリア様は現在74歳でいらっしゃるため、「日本人の配偶者等」「定住者」のどちらのビザを目指すにしても、前述の「日本人の子であること」「日本で独立して安定した生活を送れるか(生計要件)」という点が非常に重要な審査ポイントとなります。
生計要件は、日本の公的な扶助などに頼らずに生活できる経済的な基盤があるか、ということです。具体的には、以下の点などを証明していくことになります。
- 十分な年金収入: アメリカで受給している年金などが、日本での生活費を十分に賄える額であることを証明します。
- まとまった預貯金: 万が一の場合にも対応できる、十分な額の預貯金があることを示します。(預貯金残高証明書など)
- 日本にいる親族からの援助: もし日本に親族がいて、経済的なサポートや生活の面倒を見てくれる場合は、その方からの「身元保証書」や「支援に関する誓約書」などを提出することも有効です。
まとめとアドバイス
マリア様、長年離れていた日本へ戻りたいというお気持ち、とても尊いものだと思います。お母様が他界されていることは、申請を諦める理由には全くあたりません。
まずは、以下のステップで準備を進められることをお勧めします。
- 1.お母様の最後の本籍地を確認し、「除籍謄本」を取得する。
2.ご自身の親子関係を証明できる「出生証明書」等を準備する。
3.両親の「結婚証明書」を取得する。
4.ご自身の年金や預貯金など、日本での生活設計を具体的に立てる。
これらの書類の収集や、どちらの在留資格で申請するのが最適かという判断は、非常に専門的で複雑な部分もございます。特に、ご自身の状況を説得力のある「理由書」としてまとめることが、許可を得るためには不可欠です。
ご不安な点や手続きの進め方でご不明な点がございましたら、ぜひ一度、私たち行政書士のような専門家にご相談ください。マリア様の日本への帰還という大切な目標を、私たちが全力でサポートさせていただきます。