
質問内容)
①相談種別:ビザ
②申請種別:更新
③状況概要: はじめまして、行政書士の先生。私はフィリピン人の妻、エステルと申します。日本の夫とは離婚調停中(3ヶ月)で、既に別居しています。夫と結婚した当初に、フィリピンから連れ子の娘を日本に呼び寄せました。私の在留資格は「日本人の配偶者等」、娘は「家族滞在」です。私のビザの更新期限が近づいています。
④質問: 現在、夫とは離婚調停中で、すでに別居しています。このような状況で、私の在留資格「日本人の配偶者等」の期間更新申請を出すこと自体は可能でしょうか?
行政書士からの回答)
エステルさん、ご相談ありがとうございます。ご主人との離婚調停中とのこと、大変お辛い状況と存じます。離婚調停中に在留資格の更新申請を出すことは、非常にデリケートな問題であり、慎重な対応が求められますので、詳しく解説させていただきます。
1. 離婚調停中の「日本人の配偶者等」ビザ更新申請の可否
結論から申し上げますと、離婚調停中であっても、「日本人の配偶者等」ビザの更新申請を出すこと自体は可能です。
しかし、入国管理局は、その申請を非常に厳しく審査します。 なぜなら、「日本人の配偶者等」ビザは、夫婦が日本において同居し、互いに協力して安定した婚姻生活を営むことを前提としているからです。
離婚調停中であり、かつ別居しているという事実は、「夫婦としての実態が失われている」と判断される可能性が極めて高いです。
2. 審査で特に重視されるポイントと不許可の可能性
離婚調停中という状況は、審査において以下の点でマイナスに評価される可能性があります。
- 1.婚姻の真実性の疑義:
- 夫婦として別居しているため、入管は夫婦関係がすでに破綻していると判断します。
- 離婚調停中であるという事実は、夫婦関係が修復不可能な状態にあることを示す明確な証拠となります。
- 2.在留資格の目的外活動:
- 「日本人の配偶者等」ビザは、日本人配偶者との婚姻生活を目的とする在留資格です。夫婦関係が破綻している場合、その在留資格の目的に合致しないと判断されます。
これらの理由から、エステルさんが、日本人夫との離婚を経てもなお、日本に在留し続ける必要性はなく、婚姻期間が3年未満であった場合は、そもそもの婚姻について偽装結婚による渡日手段であったと疑われるリスクすら生じ得ます。従いまして、所謂「連れ子定住」の様に日本人夫との間で母国から呼寄せた連れ子を育てる様なケースとは異なり、エステルさんが離婚により、日本人の配偶者等の在留資格の該当性がなくなった場合には、母国から呼寄せた娘さんとエステルさん自身の二人の在留期間更新が不許可となる可能性は非常に高いと言わざるを得ません。また、離婚定住者への変更の可能性もありますが、日本で暮らしている在留期間は最低でも5年以上で且つ婚姻による生活期間は引続く3年間以上が必要となります。
3. 離婚調停中に申請する場合の対応策
どうしても離婚調停中に更新申請を出す必要がある場合、以下の点を明確に説明する必要があります。
- 調停中の経緯: なぜ調停に至ったのか、別居に至った理由を詳細に説明します。
- 夫婦関係の状況: 夫婦関係が既に破綻していること、そして更新許可を求める理由が、離婚後に日本で生活を続けるための準備期間であることなど、正直に説明します。
- 子供の養育: 連れ子の娘さんをエステルさんが養育しているという点は、非常に重要な要素です。 離婚後もエステルさんが娘さんの親権者となり、日本で子育てを続けていくという強い意思を、詳細な理由書で説明する必要があります。
ただし、これらの説明を行っても、審査が厳しくなることに変わりはありません。
4. 娘さんの在留資格について
エステルさんが「日本人の配偶者等」ビザを失った場合、娘さんの在留資格「家族滞在」も失効します。しかし、娘さんはご主人の実子ではないとのことですが、以下の可能性が考えられます。
- 「定住者」への在留資格変更:
- 娘さんが未成年で、実の親(エステルさん)が親権者として日本で生活を継続する場合、人道上の配慮から、在留資格を「定住者」に変更できる可能性があります。
- この場合、ご主人(日本人夫)が娘さんの身元保証人となり、生活をサポートする意思を明確に示すことが重要です。
5. まとめとアドバイス
エステルさんが離婚調停中という状況で、奥様の「日本人の配偶者等」ビザの更新申請を出すこと自体は可能ですが、許可される可能性は非常に低いです。
この場合、エステルさんと娘さんの今後の日本での生活をどうするかという視点で、戦略を立てる必要があります。
- 最も重要なのは、離婚が成立する前に、娘さんの今後の在留資格について検討することです。 離婚が成立すると、エステルさんの在留資格が「定住者」に変更となる可能性があり、それに伴い娘さんの在留資格も検討されます。
- エステルさんが日本で働く場合、別の就労ビザへの変更も検討できます。
- お子様が日本に定住し、教育を受ける必要がある場合は、エステルさんと協力し、娘さんの在留資格を「定住者」に変更する手続きを進めるべきです。
ご自身での対応は非常に困難が予想されますので、ぜひ私たち行政書士のような入管手続きの専門家にご相談ください。エステルさんと娘さんの将来に関わる問題ですので、最適な解決策を共に検討させていただきます。