blog

「海外からの移住」は短期滞在からの変更が認められる「やむを得ない事情」になりますか?

作成者: FESO|May 25, 2026 3:54:20 AM

質問内容)

① 相談種別: 日本人の配偶者等(配偶者ビザ)

② 申請種別: 在留資格変更許可申請(「短期滞在」からの切り替え)

③ 状況概要: 森川と申します。日本国籍者です。現在はフランス人の夫とフランスで生活していますが、近く日本へ移住し、日本を拠点に暮らすことを計画しています。 ネットで調べたところ、「通常は認められない『短期滞在』からの変更も、やむを得ない事情があれば認められる。夫婦で海外から日本へ移住する場合は、その事情に該当する」という情報を見かけました。

④ 質問内容: このネット情報はどの程度信頼してよいのでしょうか?実際に海外から夫婦で帰国し、短期滞在からスムーズに変更許可を得られたケースや、注意すべきアドバイスがあれば教えてください。

 

行政書士からの回答)

森川様、ご相談ありがとうございます。ネット上の「許可されることも多い」という言葉をそのまま信じて無計画に来日するのは、非常に危険であると断言せざるを得ません。

厳しいようですが、入管法の原則と、実務で突きつけられる「現実」を冷静に理解しておく必要があります。

 

1. 「やむを得ない事情」は入管の「恩恵」に過ぎない

まず、入管法第12条には「短期滞在の在留資格をもって在留する者の変更申請は、やむを得ない特別な事情に基づくものでなければ許可しない」と明記されています。

  • 移住は「特別な事情」ではない?: 本来、移住が決まっているなら、事前に日本側の親族などを通じて「在留資格認定証明書(COE)」を取得してから来日するのが正攻法です。
  • 入管の視点: 「移住するから今のままビザを変えてくれ」という要求は、法を遵守して数ヶ月待っている他の申請者に対し、「列への割り込み」を認めてくれと言っているのと同義です。

ネットにある「認められる」という情報は、あくまで入管が「人道的配慮で特別に認めてあげている運用」に過ぎず、森川様の権利として保証されているものではありません。

 

2. 直面する可能性が高い「3つの壁」

実務の現場では、以下のような厳しい現実に直面することがあります。

① 窓口での受取拒否(門前払い)

窓口の担当者によっては「まずはフランスに帰って認定申請をしてください」と、変更申請書の受理すら拒否されるケースがあります。ここで「ネットに書いてあった」と言っても通用しません。論理的な「理由書」が準備できていなければ、その場で詰んでしまいます。

② 経済的証明の不備

フランスから戻ったばかりの夫婦には、日本での収入証明(課税証明書)がありません。

  • 厳しい現実: 「預金がある」だけでは不十分です。日本での就職先が未定の場合、「日本人の配偶者が無職で、外国人夫を養えるのか?」という生計維持能力を非常に厳しく問われます。身元保証人(日本の親族)に相応の年収がなければ、不許可の確率は跳ね上がります。

③ 婚姻の真実性の疑義

「移住」という名目で短期滞在から切り替えを急ぐと、入管からは「不法就労目的の偽装結婚ではないか」「ビザ制度の悪用ではないか」と、通常の申請以上に疑いの目(慎重審査)を向けられる傾向にあります。

 

3. 森川様への厳しいアドバイス

もし、どうしても短期滞在からの変更を強行されるのであれば、以下の覚悟を持ってください。

  1. 1.「90日以内」の決着は至難の業: フランス人のノービザ滞在は90日ですが、変更申請の結果が出るまでに3ヶ月以上かかることもザラです。万が一「不許可」になれば、ご主人はその時点で即刻帰国しなければならず、日本での新生活は一瞬で崩壊します。
  2. 2.認定申請(COE)との併用検討: 最も安全なのは、入国直後に「認定申請」と「変更申請」を同時に行うなどの高度なテクニックですが、これには膨大な書類作成が必要です。
  3. 3.フランスでの婚姻記録を軽視しない : 日本の戸籍謄本だけでなく、フランス政府発行の婚姻証明書や、これまでのフランスでの生活を証明する資料(公共料金の領収書や共同名義の口座など)を、全て日本語訳付きで完璧に揃えてください。

 

4. 行政書士からのメッセージ

森川様、あえて厳しい表現をしましたが、それは「ご主人が日本で不法滞在者になるリスク」を避けていただきたいからです。

「ネットに書いてあるから大丈夫」という安易な考えで入国し、窓口でパニックになる方を多く見てきました。フランスからの移住は立派な理由ですが、それを「法的な例外」として認めさせるには、プロの目から見ても隙のない理論武装が必要です。

今の生活を畳んで日本に来るという大きな決断を無駄にしないために、まずは「楽観的な情報」を捨て、最悪のシナリオ(受取拒否や追加資料の山)を想定した準備を開始してください。

※ 本記事は2026年5月時点の情報に基づき、実務上の厳格な視点から作成されています。自己判断での申請はリスクを伴うため、専門家への相談を強く推奨します。