
質問内容)
①相談種別:ビザ
②申請種別:変更
③状況概要: はじめまして、行政書士の先生。私はモンゴル国籍のオルガ(28歳)です。現在、特定技能1号の在留資格を持っており、期限は2026年3月まであります。今年の7月に、同じモンゴル国籍で「技術・人文知識・国際業務」(技人国)の在留資格(期間3年)を持つ方と結婚しました。 結婚を機に、今の特定技能の仕事が残業も多く体力的に辛いため、退職して家族滞在ビザに変更したいと考えています。会社へは既に辞職を申し出ており、9月中旬に退職する予定です。将来の設計を考えての希望です。
④質問: 特定技能1号から家族滞在ビザへの変更は、一般的に難しいのでしょうか?また、申請する上で特に注意すべき点はありますか?
回答)
オルガさん、この度はご結婚おめでとうございます。特定技能1号の在留資格から、ご結婚を機に家族滞在ビザへの変更をご希望とのこと、承知いたしました。体力的なご負担や将来設計を考えた上での決断、よく理解できます。
1. 特定技能1号から家族滞在ビザへの変更は一般的に難しいのか?
結論から申し上げますと、特定技能1号から家族滞在ビザへの変更は、他の就労系ビザからの変更に比べて、一般的に慎重な審査が行われる傾向にあります。 しかし、不可能ではありません。
特定技能ビザは、特定の産業分野における人手不足を解消するために創設された在留資格であり、その活動内容は厳しく限定されています。そのため、入管は、特定技能として日本に在留している外国人が、その目的を途中で変更することに対して、慎重な姿勢を取ることがあります。
しかし、オルガさんの場合は、日本人または永住者、あるいは安定した就労ビザを持つ外国人(今回の場合は「技術・人文知識・国際業務」ビザを持つご主人)との婚姻という、明確な身分関係の変更を伴うため、変更が認められる可能性は十分にあります。
2. 申請で特に重視されるポイント
今回のケースで家族滞在ビザへの変更が許可されるかどうかは、以下の点が特に重視されます。
- 婚姻の真実性・安定性:
- 夫婦関係が真実であり、安定して継続していることが最も重要です。
- 結婚に至るまでの経緯、交際期間、結婚式や新婚旅行の写真、夫婦での生活実態を示す書類(同居の住民票、公共料金の領収書など)を詳細に提出する必要があります。
- ご主人が「技術・人文知識・国際業務」ビザをお持ちであるため、その安定性も考慮されます。
- ご主人の生計維持能力:
- オルガさんが退職し、ご主人の扶養に入ることから、ご主人の生計維持能力が最も重要になります。
- ご主人の現在の収入(給与明細、源泉徴収票)、安定性(在職証明書)、過去の納税状況(納税証明書、課税証明書)、年金・社会保険の納付状況などが厳しく審査されます。
- 夫婦二人分の生活費を安定して賄えるだけの経済力があることを、預貯金残高証明書などで具体的に証明する必要があります。
- 変更の必要性と合理性:
- なぜ特定技能の仕事を辞めてまで家族滞在ビザに変更する必要があるのか、その理由を明確に説明する必要があります。
- オルガさんの場合は、「残業が多く体力的に辛い」という理由に加え、「将来設計を考えての希望」という点が重要になります。ご主人との安定した家庭生活を築き、日本で安心して暮らしていくという目的を具体的に説明しましょう。
- 特定技能の活動を継続できない「やむを得ない事情」として、体力的な負担を具体的に説明することも有効です。
- 在留状況の善良性:
- 特定技能ビザでの在留中、交通違反やその他の法令違反がないことが前提となります。
- 納税義務や社会保険料の納付をきちんと行っていることも重要です。
3. 申請に必要な書類と注意点
一般的に、在留資格変更許可申請には以下の書類が必要ですが、今回のケースでは特に以下の書類を充実させる必要があります。
- 在留資格変更許可申請書
- パスポート、在留カード
- 夫婦の婚姻関係を証明する書類:
- ご主人の在留カードのコピー
- 婚姻証明書(モンゴルで発行されたものと日本語訳)
- 戸籍謄本(日本人と結婚している場合)
- 結婚に至るまでの経緯を説明する詳細な理由書
- 夫婦で写っている写真(交際中から現在まで、様々な場面で撮られたもの)
- 電話やSNSでのやり取りの履歴
- 夫婦の同居を示す書類:
- 住民票(世帯全員分)
- 賃貸契約書(夫婦で同居していることがわかるもの)
- 公共料金の領収書など
- ご主人の生計維持能力を証明する書類:
- 在職証明書、給与明細、源泉徴収票
- 納税証明書(直近数年分)
- 課税証明書(直近数年分)
- 預貯金残高証明書
- 年金・社会保険の納付状況を証明する書類(ねんきん定期便、健康保険証のコピーなど)
- オルガさんの現在の特定技能の活動状況に関する書類:
- 現在の会社からの退職証明書または退職予定証明書(退職理由を具体的に記載してもらう)
- 特定技能の活動内容に関する説明書(なぜ継続が困難なのかを具体的に説明)
特に注意すべき点:
- 退職時期と申請タイミング:
- 9月中旬に退職予定とのことですが、退職後、速やかに家族滞在ビザへの変更申請を行うことが重要です。無職の期間が長くなると、在留資格の変更が困難になる可能性があります。
- 現在の特定技能ビザの期限(2026年3月)まで余裕があるため、焦らず、しかし迅速に準備を進めましょう。
- 理由書での丁寧な説明:
- なぜ特定技能の活動を継続できないのか(体力的な負担、将来設計など)を具体的に、かつ説得力のある形で説明します。
- ご主人との婚姻が真実であり、日本で安定した家庭を築きたいという強い意思を強調します。
- ご主人の生計維持能力が十分であることを、理由書でも補足的に説明します。
- 虚偽の申告は厳禁: 事実を隠したり、虚偽の申告をしたりすることは絶対に避けてください。発覚した場合、不許可になるだけでなく、今後の日本での在留が極めて困難になります。
4. 申請が不許可になった場合の対応
万が一、家族滞在ビザへの変更申請が不許可になった場合、原則として、その時点で有効な在留資格がなければ、日本に引き続き在留することはできません。
- 不許可理由の確認: まず、入管に不許可理由を詳しく確認することが重要です。
- 不許可理由の解消と再申請: 不許可理由を解消できる場合は、補強資料を準備し、再申請を検討します。
- 出国準備: 不許可理由を解消できず、日本に在留するための別の手段がない場合は、出国期限までに日本を出国する必要があります。
まとめとオルガさんへのアドバイス
オルガさんの場合、特定技能1号から家族滞在ビザへの変更は、ご主人が安定した「技術・人文知識・国際業務」ビザをお持ちであり、婚姻が真実であれば、十分に可能性はあります。しかし、特定技能からの変更である点、そして退職を伴う点から、慎重な準備が求められます。
オルガさんが今すべき最も重要なことは、
- 1.ご主人と協力し、婚姻の真実性を示す書類と、ご主人の生計維持能力を示す書類を完璧に揃えること。
- 2.退職理由と家族滞在への変更理由を、具体的に、かつ説得力のある理由書としてまとめること。
- 3.退職後、速やかに申請手続きを開始すること。
ご自身での申請も可能ですが、特定技能からの変更は専門的な知識が必要となるため、私たち行政書士のような入管手続きの専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。オルガさんが日本で安心してご主人と生活できるよう、私たちも精一杯サポートさせていただきます。
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