経営管理ビザFAQ

経営管理ビザ

複数事業・兼業はNG?許可後のビジネス拡大で注意すべき点

  • 7月 3 2025
  • FESO

質問内容)

①相談種別:在留資格

②申請種別:経営・管理ビザ(許可後の事業活動)

③状況概要: 私はスペイン国籍のマルコス・シルバ(42歳)と申します。3年前に日本でITコンサルティング会社を設立し、経営管理ビザを取得しました。事業は順調に推移しており、おかげさまでビザも一度更新できています。 最近、日本の伝統工芸品に魅力を感じ、ITコンサルティング業とは別に、オンラインでの工芸品販売事業を立ち上げたいと考えています。妻(スペイン国籍、家族滞在ビザ)もこの新しい事業に興味を持っており、手伝ってもらいたいと思っています。

④質問: 現在、経営管理ビザを持っていますが、現在のITコンサルティング事業とは別に、オンラインで伝統工芸品の販売事業を新たに始めることは可能でしょうか?もし可能であれば、ビザへの影響や、何か手続きが必要になりますか?また、妻(家族滞在ビザ)が手伝うこともできますか?

 

 回答)

マルコスさん、この度はご相談いただきありがとうございます。経営管理ビザをお持ちで、順調に事業を拡大され、新たなビジネス展開をご検討されているとのこと、素晴らしいですね。複数の事業を兼業・展開する場合の経営管理ビザへの影響について、詳しく解説させていただきます。

 

1. 経営管理ビザにおける複数事業・兼業の可否について

結論から申し上げますと、経営管理ビザをお持ちの方が、現在の事業とは別に、新たな事業を始めること(兼業・複数事業展開)は可能です。

経営管理ビザは、「事業の経営を行い又は管理に従事する活動」を対象としており、必ずしも一つの事業のみに限定されるものではありません。むしろ、事業家としての能力や、収益を多角化する経営手腕は、入管の審査においてプラスに評価されることもあります。

ただし、許可されている在留資格の範囲内で、適切な手続きを行うことが重要です。

 

2. 新たな事業を開始する際のビザへの影響と注意点

新たな事業を開始する際には、以下の点に注意し、適切に対応することで、ビザへの悪影響を避けることができます。

  1. a. 事業内容の変更に関する届出の要否:
    • 通常、経営管理ビザ取得時に提出した「事業計画書」に記載されていない全く新しい事業を開始する場合、入管への届出や、場合によっては在留資格の変更申請が必要となる可能性があります。
    • 「事業活動の継続性・整合性」が重要です。元のITコンサルティング事業と、新たに始める工芸品販売事業の間に、何らかの関連性(例:ITコンサルティングで培ったノウハウを活かしてECサイトを構築・運営するなど)があれば、よりスムーズに理解されやすくなります。
    • もし、全く関連性のない事業を始める場合でも、それぞれの事業が安定して継続できることを明確に説明できれば問題ありません。
    • 具体的な手続きとしては、まずは管轄の出入国在留管理局に相談し、届出で済むのか、あるいは「在留活動変更許可申請」が必要になるのかを確認することが最も確実です。
  2. b. 事業所の確保と管理:
    • 新たな事業を開始する場合、その事業活動を行う場所(オフィス、店舗、倉庫など)を確保する必要があります。本店所在地以外に事業所を設ける場合は、その情報も適切に入管に届け出る必要があります。
    • 自宅の一部をオフィスとして利用する場合でも、そのスペースが事業活動に十分であることを説明できるように準備しておきましょう。
  3. c. 財務状況の安定性:
    • 新たな事業を開始しても、既存の事業と合わせて、世帯全体の生計を安定的に維持できる経済力があることが大前提となります。
    • 両事業の収益性、安定性、継続性を明確に示した**新しい事業計画書(または既存事業計画書の補足・修正版)**を作成することが重要です。特に、初期投資や運転資金がどのように賄われるのかを具体的に示す必要があります。
    • 決算期には、両事業を合わせた会社の財務状況が健全であることを証明する書類(決算報告書など)を提出することになります。
  4. d. 事業活動の実態:
    • 経営管理ビザは、実際に事業の経営・管理に従事する活動に対して与えられます。複数の事業を行う場合でも、それぞれの事業において、マルコスさん自身が経営者として実質的に関与していることを示す必要があります。名義貸しや、単なる投資活動とみなされないように注意してください。
    • 各事業における業務内容、責任範囲、関与する時間などを明確にしておきましょう。
  5. e. 許認可の確認:
    • 新たな工芸品販売事業において、特定の許認可が必要となる場合があります(例:古物商許可、食品販売許可など)。事業を開始する前に、必要な許認可を管轄の行政機関に確認し、取得しておく必要があります。

3. 家族滞在ビザの配偶者が事業を手伝うことについて

マルコスさんの奥様が家族滞在ビザをお持ちとのことですが、家族滞在ビザの外国人が報酬を得て働くこと(就労活動)は、原則として認められていません。

  • 無報酬での手伝い: 報酬を伴わない「手伝い」であれば問題ありません。例えば、自宅で商品の梱包を手伝う、無報酬でウェブサイトの更新を手伝う、などです。
  • 資格外活動許可の取得: 報酬を得て働く場合は、「資格外活動許可」を取得する必要があります。しかし、この許可は、週28時間以内という時間制限があり、かつ単純労働が主となる活動(例:レジ打ち、品出しなど)に限られることが一般的です。新しい事業の経理や運営に深く関与し、報酬を得る場合は、現在の家族滞在ビザの範囲を超える可能性があります。
  • 「経営・管理」ビザへの変更: もし奥様が本格的に新しい事業の経営に携わり、役員として報酬を得たい場合は、奥様自身が「経営・管理」ビザを取得する必要があります。この場合、奥様も単独で経営管理ビザの要件(例:500万円以上の資本金、事業計画書など)を満たす必要があります。これは、非常にハードルが高い選択肢となります。

したがって、奥様が事業を手伝う場合は、報酬の有無と業務内容に細心の注意を払う必要があります。

 

まとめとマルコスさんへのアドバイス

マルコスさん、経営管理ビザをお持ちのまま複数の事業を展開することは、日本の法制度上可能です。これは事業の多角化として前向きに評価されることもあります。

特に重要な点として、

  • 新しい事業の事業計画を明確にすること
  • 両事業合わせて安定した生計を維持できる財務状況を示すこと
  • 各事業においてご自身が経営者として実質的に関与していること
  • 必要に応じて入管への届出や相談を行うこと

が挙げられます。

また、奥様が事業を手伝う場合は、報酬の有無と業務内容に細心の注意を払い、資格外活動許可の範囲を逸脱しないよう厳重に管理してください。

 

ご自身のビザへの影響を最小限に抑え、スムーズな事業拡大を実現するためにも、新たな事業を開始する前に、私たち行政書士のような入管手続きの専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。マルコスさんの新しい挑戦を、私たちも全力でサポートさせていただきます。