帰化FAQ

帰化

夫の死後、専業主婦でも帰化できる?相続資産での申請を解説

  • 8月 14 2025
  • FESO
 

 

 質問内容)

①相談種別:帰化

②申請種別:普通帰化

③状況概要: ミャンマー国籍のアウン・サン(36歳)と申します。2013年から日本に住んでおり、在留資格は日本人の夫の生前に永住者に変更済みです。夫が昨年亡くなり、子供はいません。夫には両親や兄弟姉妹もおらず、都内の自宅マンションや預貯金など、夫の遺産をすべて私が相続しました。先日、相続税の納付も終わったところです。 夫の生前は専業主婦だったため、就労実績がありません。ですが、相続した資産で今後の生活には全く支障がない状況です。これからも日本で生きていきたいという思いが強く、就労意欲もあるので、帰化を希望しています。

④質問: これから就労して3年の実績を作らないと、帰化申請はやはり無理でしょうか?「資産による生計の安定性」や「今後の就労予定・生活設計」などを説明すれば、帰化申請の道は開かないでしょうか?また、「せめて1年の就労実績を作ってから」といった形で申請を試みるのはどうでしょうか?

 

 行政書士からの回答)

アウン・サンさん、この度はご主人の逝去、心よりお悔やみ申し上げます。長年連れ添ったご主人を亡くされ、ご不安な中で今後の日本での生活と帰化をご検討のこと、心中お察しいたします。

結論から申し上げますと、就労実績がない専業主婦であっても、相続した資産を基に、帰化申請を行うことは十分に可能です。 帰化の要件である「生計要件」は、必ずしも就労収入だけで判断されるものではありません。

 

1. 帰化申請における「生計要件」の考え方

帰化の要件の一つに「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」があります。これは、申請者が日本で安定した生活を送ることができ、国や地方公共団体に頼ることなく生活していける経済力があるかどうかを判断するものです。

この「生計要件」は、以下のように総合的に判断されます。

  • 就労収入: 会社員や自営業者として安定した収入があるか。
  • 資産: 預貯金、不動産、株式などの資産があるか。
  • 技能: 安定した収入を得られる専門的な技能や資格があるか。

アウン・サンさんの場合、就労収入の実績はないものの、ご主人の遺産を相続されたことで、「資産による生計の安定性」を強くアピールできる状況です。これは、帰化申請において非常に有利な要素となります。

 

2. 就労実績がなくても資産で帰化申請は可能か?

はい、可能です。アウン・サンさんの場合、以下の点を証明することで、就労実績がなくても帰化申請の道は開けます。

  1. 1.潤沢な預貯金:
    • 預貯金や有価証券など、換金性の高い資産を多く保有している場合、それだけで十分に「独立の生計」を維持できると判断される可能性があります。
    • 相続した預貯金の残高証明書を提出することで、経済的な基盤が安定していることを明確に証明できます。
  2. 2.自宅マンション:
    • 都内の自宅マンションを所有している場合、家賃の支払いがないため、生活費の負担が大幅に軽減されます。これも生計の安定性を示す重要な要素です。
    • 不動産の登記事項証明書や、固定資産評価証明書などを提出して証明できます。
  3. 3.相続の正当性:
    • ご主人の逝去というやむを得ない事情で資産を相続された経緯、そして相続税を適切に納付したという事実は、不許可につながる要因ではありません。むしろ、日本の法律に基づいた手続きをきちんと行っていると評価されます。

3. 「就労3年」や「就労1年」の実績は必要か?

アウン・サンさんの場合は、必ずしも就労実績を作ってから申請する必要はありません。

なぜなら、帰化の「生計要件」は、あくまで「資産または技能」で判断されるためです。潤沢な資産がある場合、就労して安定した収入があることと同等、あるいはそれ以上に安定した生計基盤があると評価される可能性があります。

もし、就労を開始してからの申請を検討する場合、安定した収入と納税実績を証明するのに一定の期間(通常1年以上)が必要となります。相続した資産による生計維持能力が十分であるにもかかわらず、そのために申請を遅らせる必要はないと考えることもできます。

ただし、「今後の就労予定」については、帰化申請の際に「将来の生活設計」として積極的にアピールすることをお勧めします。就労意欲があることは、日本社会に勤労と納税、保険料納付による相互扶助への参加など日本国民として日本国の構成員となり、将来の永きにわたって貢献する意思があることの証明となり、プラスに評価される可能性があります。勿論、この点は就労実績によるアピールに勝るものはありません。是非ご検討ください。

 

4. 申請にあたっての注意点と準備すべきこと

就労実績がないケースだからこそ、以下の点を最大限に準備し、慎重に対応する必要があります。

  1. 1.詳細な動機書の作成:
    • ご主人とどのように出会い、結婚生活を送ってきたのか、ご主人が亡くなられた際の状況など、これまでの人生を時系列で詳細に記述します。
    • ご主人が亡くなられた後も、日本で生きていきたいという強い思い、その理由を丁寧に説明します。
    • 就労実績はないものの、相続した資産によって生活に全く支障がないこと、そしてその資産をどのように管理していくのか、将来の生活設計を具体的に示します。
    • 就労意欲があることを示し、今後、どのような分野で社会に貢献していきたいかを記述することも有効です。
  2. 2.資産の証明:
    • 預貯金残高証明書(複数口座)、不動産の登記事項証明書、有価証券の残高証明書など、相続したすべての資産に関する証明書を漏れなく提出します。
    • 相続税申告書や、相続税の納税証明書も添付し、法的な手続きをきちんと行っていることを示します。
  3. 3.素行の善良性の証明:
    • 専業主婦であったとしても、住民税や年金・健康保険の納付は義務となります。これらの公的義務をきちんと果たしてきたことを証明する書類を完璧に揃えます。
    • 交通違反歴や犯罪歴がないことを証明する書類(運転記録証明書など)も提出します。

まとめとアウン・サンさんへのアドバイス

アウン・サンさん、就労実績がない場合でも、相続された多額の資産を基に、帰化申請を行うことは十分に可能です。

最も重要なのは、「資産による安定した生計」と「今後の日本での生活設計」を、客観的な証拠に基づき帰化の動機書で説明し、面接時の説明で明確に示すことです。

ご自身での申請も可能ですが、相続という特殊な事情が絡むため、提出書類に関する提出意図や説明を要すものを理由書などの補強資料として作成するには専門的なノウハウが不可欠です。ご不安な場合は、私たち行政書士のような帰化申請の専門家にご相談いただくことを強くお勧めします。

アウン・サンさんが日本で安心して生活し、日本国籍を取得できるよう、私たちも全力でサポートさせていただきます。


 

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