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ベトナム人内定者を短期滞在ビザでインターンシップに招きたいのですが、COE申請に悪影響はありませんか?

作成者: FESO|Jul 3, 2025 5:06:03 AM
 

 

 質問内容)

①相談種別:ビザ

②申請種別:短期滞在

③状況概要: 私は日系企業の人事担当、髙橋と申します。来年2026年4月に入社が内定しているベトナム人の候補者(24歳、仮名:チャン・ヴァン・フン)がおります。彼の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格認定証明書(COE)申請は、本年12月から1月頃に行う予定です。 つきましては、もし入管法上可能であれば、本年10月に事前に彼を日本に招き、インターンシップを行いたいと考えています。インターンシップの期間は2週間程度で、航空券や滞在ホテルなどの費用は弊社が負担する予定です。対価は無給ですが、食事代として一日3,000円を支給する予定です。

④質問: 弊社が行おうとするインターンシップを受け入れる場合、申請種別としては短期滞在ビザに該当できるかどうか検討しております。会社の考えている内容では、短期滞在ビザの申請は難しいと思われますがいかがでしょうか?(もし、クリアできるような方法があればお教えいただければ幸いです。) 弊社としましても、インターンシップを行うことが来年の「技人国」認定申請に悪影響があるようなら、インターンシップ自体を取りやめる考えもございます。今回弊社が行おうとしているインターンシップの事例がもしあれば、教えていただければ幸いです。


 

回答)

髙橋様、この度は内定者の方を日本に招いてインターンシップを行いたいというご意向、そしてそれが来年のCOE申請に影響しないかというご心配、承知いたしました。非常に重要なポイントですので、詳しく解説させていただきます。

 

1. 短期滞在ビザでのインターンシップの可否について

結論から申し上げますと、ご記載のインターンシップの内容では、短期滞在ビザでの入国は難しい可能性が高いです。

短期滞在ビザは、観光、商用、親族訪問、短期的な研修など、報酬を伴わない短期間の活動を目的とする場合に許可されるものです。特に、「報酬を伴う活動」や「将来の就労を見据えた実質的な労働」と見なされる場合は、短期滞在ビザの対象外となります。

今回のご提案内容には、以下の点が懸念されます。

 

「無給」と「食事代支給」の解釈:
  • 「無給」であることは短期滞在ビザの条件に合致します。しかし、「食事代として一日3,000円支給」という点が入管にどう判断されるかが重要です。これが単なる実費弁償(交通費や宿泊費の実費精算など)の範囲を超え、実質的な「対価」や「報酬」と見なされる可能性があります。
  • 特に、航空券やホテル代を会社が負担する点も、「雇用関係に基づく利益供与」と解釈される一因となり得ます。

「インターンシップ」の目的と内容:
  • インターンシップの内容が、単なる企業見学や簡単な説明に留まる場合は問題ありませんが、具体的な業務への従事、指導的立場の者からの指示による作業、成果物の発生など、実質的な労働を伴う場合は、短期滞在の範囲を超えると判断されます。
  • 2週間という期間も、その内容によっては「研修」に該当する可能性があり、その場合は在留資格「研修」の要件を満たす必要があります。

2. 来年の「技人国」認定申請への悪影響

会社のご心配の通り、今回のインターンシップの受け入れ方が適切でないと判断された場合、来年の「技人国」認定申請に悪影響が出る可能性は十分にあります。

  • 短期滞在ビザの虚偽申請と判断されるリスク: もし、インターンシップが実質的な就労と判断された場合、短期滞在ビザの目的を偽って申請した(虚偽申請)と見なされる恐れがあります。虚偽申請は、今後のすべての在留資格申請において、申請者の信頼性を著しく損なう行為となります。
  • 企業の信頼性の低下: 虚偽申請に関与した企業として、入管からの信頼性が低下し、今後の外国人雇用に支障をきたす可能性も否定できません。

 

過去に、短期滞在ビザで入国した外国人が、実質的な就労を行ったとして退去強制の対象となったり、その後の在留資格申請が不許可になったりする事例は少なくありません。特に、すでに内定が出ており、将来的に長期滞在を予定している方の場合、入管はより慎重に審査を行う傾向にあります。

 

3. 短期滞在ビザでインターンシップを行うためのクリアな方法(極めて限定的)

原則として、内定者に対する「実質的な労働を伴うインターンシップ」は、短期滞在ビザでは困難です。しかし、どうしても行いたいという場合は、以下の点を厳格に遵守し、リスクを最小限に抑える必要があります。

 

「対価性」の排除:
  • 食事代3,000円の支給は、実質的な報酬と判断されるリスクが非常に高いです。 完全に無給とし、航空券や宿泊費も会社が「費用負担の義務がある」とみなされないよう、内定者が自己負担とするか、実費精算であることを明確にする必要があります。
  • または、会社からの援助ではなく、日本滞在中の個人的な生活費は内定者自身が用意できることを証明する(例:預貯金残高証明書)。

「業務性」の排除:
  • インターンシップの内容を、「企業見学」「会社概要・事業説明」「業界の基礎知識に関する座学」「日本人社員との交流(無報酬の範囲で)」といった、実質的な労働や具体的な業務への従事を伴わない範囲に限定してください。
  • 指示系統は「業務命令」ではなく「学習支援」の形とし、成果物やレポートの提出を義務付けないなど、学生の学習活動としての性質を強調する必要があります。

「研修」としての明確化:
  • もし、本格的な研修を行いたいのであれば、「研修」の在留資格を検討する必要があります。ただし、「研修」ビザは、その目的、期間、対価、受入れ機関の体制など、独自の厳しい要件があり、簡単に取得できるものではありません。

目的の乖離を防ぐ理由書の作成:
  • 短期滞在ビザ申請時に、インターンシップの具体的な内容、期間、無給であること、将来のCOE申請とは目的が異なること(例:入社前の日本文化への適応促進、社内交流を目的とするなど)を詳細に記載した理由書を提出します。

4. 過去のインターンシップ事例(短期滞在ビザ)

短期滞在ビザでインターンシップが認められた事例は、多くの場合、以下のいずれかのパターンに該当します。

  • 学術的・研究目的: 大学間の交換留学プログラムの一環で、研究室での短期間の観察・学習を行う場合。(無給が前提)
  • 国際交流目的: NPO法人などが主催する、無報酬の国際交流プログラムやボランティア活動の一環として、短期間の交流活動を行う場合。
  • 非常に限定的な企業見学・業界視察: 報酬が発生せず、具体的な業務への従事が一切なく、純粋な情報収集や見学に徹する目的の場合。

 

これらの事例はいずれも「報酬性」と「業務性」が極めて低いか、皆無であることが前提です。内定が出ている「将来の従業員」に対して行われるインターンシップは、これらとは性質が異なるため、より慎重な判断が求められます。

 

まとめとアドバイス

今回ご検討のインターンシップは、来年の「技人国」認定申請への悪影響を避けるためにも、実行しない、または内容を大幅に見直すことを強くお勧めします。 特に「食事代の支給」は、報酬と見なされるリスクが非常に高いです。

  • 最も安全なのは、インターンシップ自体を取りやめ、COE申請に注力することです。
  • もし、どうしても日本でインターンシップを行いたいのであれば、報酬性を完全に排除し、純粋な企業見学や交流活動に限定する必要があります。その場合でも、内定者であるという事実から、入管が「実質的な就労目的」と判断するリスクは残ります。

 

来年の「技人国」認定申請は、ベトナム人のチャンさんが日本で長期的に就労するための重要な手続きです。この主要な手続きに悪影響が出ないよう、リスクを最小限に抑える判断をされることをお勧めいたします。

ご不安な点があれば、私たち行政書士のような入管手続きの専門家にご相談いただき、最適な方法を共に検討していきましょう。