質問内容)
①相談種別:在留資格
②申請種別:定住
③状況概要: ペルー国籍のフェルナンド(祖父・68歳)です。 私の孫であるマリオ(ペルー国籍・15歳)は、日本で生まれ育ち、日本語も日本人と同じように話せます。マリオの両親(私たちの子ども)もペルー国籍で定住ビザを持っていましたが、マリオが幼い頃にペルーへ帰国しました。その後、私たち祖父母がマリオを育ててきました。私たちもペルー国籍で、定住ビザを保持しています。マリオは今、日本の学校に通っています。 ただ、マリオの在留資格について、ビザの更新を失念してしまった可能性があります。 このままマリオに日本で生活を続けさせてあげたいのですが、どうすれば良いでしょうか?
④質問: この場合、マリオの定住ビザ取得は可能でしょうか?もし可能であれば、私たちがどのような対応を取るべきか、ご助言いただけますでしょうか?
回答)
この度はご相談いただきありがとうございます。お孫さんのマリオさんの件でご不安なことと存じます。日本で生まれ育ち、日本語も堪能でいらっしゃるお孫さんが、在留資格についてご心配されているケースですね。両親が海外に帰国し、祖父母に育てられた方が在留資格を失念してしまった場合の対応は、特別な事情を考慮して判断されるため、慎重な対応が必要です。
1. 日本で生まれ育った方の定住ビザ取得の可能性
結論から申し上げますと、お孫さんのマリオさんのように日本で生まれ育ち、日本社会に深く適応している方が定住ビザを取得できる可能性は十分にあります。 たとえ過去に在留資格の更新を失念していた期間があったとしても、直ちに諦める必要はありません。
定住ビザは、法務大臣が個々の外国人について特別な理由を考慮し、日本での定住を認める在留資格です。特に、日本での出生、長期間の在留、日本での教育歴、そして日本社会への適応状況は、この「特別な理由」として強く考慮される要素となります。
特に重視されるポイント
- 日本での出生および継続的な在留期間:
- マリオさんが日本で生まれ、幼少期から日本で教育を受け、長期間継続して日本に在留している事実は非常に重要です。これは、日本社会への高い適応性を示すからです。
- 日本での教育歴:
- 日本の学校に通われていることは、日本語能力の高さと、日本の教育システムに適応してきたことを証明します。
- 日本での生活基盤と安定性:
- マリオさんの生計維持能力として、主に祖父母である貴方様の収入や資産が審査されます。今後もマリオさんを含めた家族全員が安定した生活を送ることができ、国や自治体に頼らずに生活できるかどうかが審査されます。
- 日本での納税義務(所得税、住民税など)や社会保険(健康保険、年金)の納付状況も厳しく確認されます。
- 日本社会への適応状況:
- 日本語能力(読み書き、会話能力)はもちろん、日本の文化や習慣、社会規範を理解し、それに従った生活を送っているかどうかが評価されます。
- 交通違反や犯罪歴がないなど、素行の善良性も必須要件です。
- 祖父母との関係性:
- マリオさんを育ててきた祖父母である貴方様が定住ビザ保有者であること、そして現在も日本にいることは、マリオさんの日本での生活基盤を支える重要な要素として考慮されます。
2. 過去に在留資格の更新を失念していた場合の対応
フェルナンド様が最も懸念されているであろう点ですね。過去に在留資格の更新を失念していた期間があったとしても、その期間や経緯によって対応が異なります。
- オーバーステイ(不法残留)の期間: もし有効な在留資格を持たずに日本に滞在していた期間がある場合、これは入管法違反となります。この場合でも、直ちに定住ビザが取得できないわけではありませんが、非常にハードルが高くなります。
- 入管への出頭・申告: まずは、正直に入管へ出頭し、現在の状況を申告する必要があります。これは、自ら過ちを認め、問題解決に協力する姿勢を示す上で非常に重要です。
- 在留特別許可(特例措置): マリオさんのように日本で生まれ育ち、日本社会への適応性が高いなど、人道上や日本社会への貢献に鑑みて特別な事情がある場合には、退去強制手続の中で「在留特別許可」が与えられ、定住ビザへの変更が認められる可能性がごく稀にあります。これは法務大臣の広範な裁量によるもので、非常に厳しく判断されます。
- 過去の違反の期間や内容: 違反の期間が短い、悪質性が低い、やむを得ない事情があったなどの場合は、考慮される余地もありますが、重い違反であればあるほど、許可は困難になります。
3. 申請に必要な書類と特に準備すべきこと
定住ビザの申請には多くの書類が必要ですが、お孫さんのマリオさんのケースでは特に以下の書類を充実させる必要があります。
a. 在留資格変更許可申請書(または在留資格取得許可申請書)
b. パスポート、在留カード(もし有効なものがあれば)
c. 出生証明書: 日本で生まれたことを証明するもの。
d. 日本での教育歴を証明する書類:
-
- 幼稚園、小学校、中学校、高校の卒業証明書、成績証明書、在学証明書など、日本での学歴をすべて網羅的に提出します。
- 日本語能力を客観的に証明できるもの(例:日本語能力試験の合格証明書)があれば提出します。
e. 日本での生活状況を証明する書類:
- 住民票(世帯全員分): 長期にわたる居住歴を示すため、過去の転居履歴も確認できるものが望ましいです。
- 納税証明書、課税証明書: 祖父母様(貴方様)の直近数年分の所得税、住民税、消費税等の納税証明書を提出し、納税義務を適切に果たしていることを示します。
f. 生計維持能力を証明する書類:
祖父母様(貴方様)の現在の収入を証明する在職証明書、年金受給証明書など。
祖父母様(貴方様)の預貯金残高証明書(まとまった貯蓄があれば有利です)。
マリオさんを含めた家族構成や家計状況を説明する家計収支表。
g. 親族関係を証明する書類:
- マリオさんの両親、そして祖父母である貴方様との関係性を証明する書類(ペルーでの戸籍謄本や公証書など)と日本語訳。
- マリオさんの両親が海外に帰国した経緯と、なぜ祖父母である貴方様がマリオさんを養育することになったのかを説明する書類(理由書)。
h. 詳細な理由書(上申書)の作成:
- なぜマリオさんの定住ビザを希望するのか、日本での生活への強い意思と理由を具体的に記述します。
- 過去に在留資格の更新を失念した期間がある場合は、その経緯と理由を正直に説明し、深く反省していること、今後は法令を遵守することを誓約する旨を記載します。
- 日本で生まれ育った環境、日本語能力、日本社会への適応性、将来の日本での生活設計などを強調します。
i. 身元保証書: 日本に住む安定した身元保証人(原則として日本人または永住者)が必要です。通常は、祖父母である貴方様が定住ビザを保持しているため、貴方様が身元保証人となることが適切です。
まとめとフェルナンド様へのアドバイス
お孫さんのマリオさんのように日本で生まれ育ち、日本社会に深く適応している方は、定住ビザ取得の可能性は十分にあります。しかし、過去の在留資格の状況が不明確である点や、オーバーステイの期間がある場合は、非常に複雑で難易度の高い申請となります。
ご自身での申請も不可能ではありませんが、入管法は非常に専門的であり、個別の事情を正確に伝え、説得力のある書類を揃えることが許可の鍵となります。特に、オーバーステイの期間がある場合は、今後の日本での生活全てに関わる重大な問題となりますので、必ず入管手続きに精通した行政書士にご相談いただくことを強くお勧めします。
専門家は、フェルナンド様とマリオさんの詳細な状況をヒアリングし、過去の在留状況の正確な把握、最も効果的な申請戦略の立案、説得力のある理由書や上申書の作成、必要な補強資料の収集、そして入管とのやり取りのサポートを通じて、許可の可能性を最大限に高めるお手伝いをさせていただきます。
マリオさんが安心して日本で生活を続けられるよう、私たちも精一杯サポートさせていただきますので、どうぞご相談ください。