皆さんこんにちは。永住権の申請書類を提出し、受領票を受け取ると一安心される方が多いですが、実はここからが本当の正念場です。永住権の審査は現在、非常に時間がかかっており、結果が出るまで1年半以上待つことも少なくありません。
この長い審査期間中に、あなたの生活状況に変化が生じることがあります。入管法では、申請内容に重要な変更があった場合、速やかに報告することが求められています。
もし報告を怠り、入管側が職権調査でその事実を把握した場合、「虚偽の申請」や「事実の隠蔽」とみなされ、本来許可されるはずの案件でも不許可になってしまう恐れがあります。
この記事では、永住権審査中に報告しなければならない代表的な変更点について、行政書士が解説します。
1. 転職や退職など「仕事に関する変更」
永住権の要件の一つである「生計維持能力」に直結するため、仕事に関する変更は最も重要な報告事項です。
1-1. 転職した場合
審査期間中に転職した場合は、速やかに入管へ報告し、新しい職場の雇用契約書や年収見込額を証明する書類を提出する必要があります。転職によって年収が下がったり、職種が大きく変わったりすると、審査に影響を与える可能性があります。
1-2. 勤務先の倒産や退職
万が一、審査期間中に会社を退職した、あるいは勤務先が倒産した場合は、その事実を隠さず報告しなければなりません。無職の期間が長引くと、生活の安定性がないと判断されるため、早急に次の職を見つけ、その状況を報告する準備が必要です。
1-3. 転職と在留期間の関係
転職により契約機関に変更が生じた場合には、その後の更新申請で決定される在留期間に影響を与えることがあります。これは例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の場合、雇い入れる会社のカテゴリー1~4により許可される在留期間に違いが出てきます。上場企業や大手企業では就労の安定継続性の評価が高く、そうではない企業と比べ3年や5年の在留期間の決定がされ易い傾向があります。ベンチャー企業やスタートアップ企業では優秀な外国人であっても転職後初の更新申請でこれまでの5年や3年であった在留期間が1年に短縮されて許可されることもあります。また、企業規模とは別にキャリアチェンジにより大きく職種が変更される場合なども、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の該当性に疑義が生じ1年の在留期間が決定され、次回更新の際に、これまでの就労実績を審査対象とする運用が適用されてしまうためです。このように永住許可申請中の転職には細心の注意が必要とされ、転職後初の在留期間更新許可申請で1年の在留期間が決定されると永住許可申請自体も不許可になる可能性が極めて高くなります。
2. 結婚、離婚、出産などの「家族構成の変更」
身分事項の変更も、永住権の審査(特に身分系ビザから申請している場合や扶養家族の確認)に大きな影響を与えます。
2-1. 結婚や離婚
日本人配偶者や永住者の配偶者として申請している場合、離婚は申請の前提条件を失うことを意味します。また、独身として申請した後に結婚した場合も、世帯年収や扶養家族の状況が変わるため、戸籍や証明書の提出が必要です。
2-2. 出産や扶養家族の増減
子どもが生まれた場合や、本国の両親を新たに扶養に入れた場合、住民税の課税額や世帯の生計維持能力の評価が変わります。これらも正確に報告する必要があります。
3. 引っ越しによる「住所の変更」
住所が変わった場合は、役所での転入手続きだけでなく、入管への報告も必須です。
3-1. 住所変更届
住所が変わると、入管からの通知書類(追加資料の提出依頼や結果通知)が届かなくなってしまいます。また、居住の安定性を確認する上でも、新しい住所の住民票と移転後の住所が記載された在留カード(表裏)の写しを提出することが求められます。
4. 交通違反や犯罪に関わる「素行の変更」
審査期間中に交通違反(スピード違反や駐車違反)を起こしてしまった場合、これも報告の対象となります。
4-1. 違反の申告
「バレなければ大丈夫」と考えるのは非常に危険です。入管は審査の最終段階でも最新の警察記録を照会することがあります。自身で正直に報告し、反省文などを添える方が、隠していて後から発覚するよりも審査官の心証は良くなります。
5. 在留資格の更新(現在の在留資格の期限が来る場合)
永住権の審査中に、現在持っているビザの期限が来てしまうことがあります。
5-1. 現在のビザの更新手続き
「永住申請中だから更新しなくていい」というのは大きな間違いです。永住権の結果が出る前に現在のビザの期限が切れる場合は、必ず別途、在留期間更新許可申請を行わなければなりません。これを忘れるとオーバーステイ(不法残留)となり、永住申請もその時点で不許可となります。
審査期間中の不安は、早めに専門家へ
審査期間中の状況変化は、誰にでも起こり得るものです。大切なのは、変化があったときに「何を、いつ、どのように報告するか」という適切な判断です。焦らず、自己判断で放置せず、まずは私どものような行政書士に相談することをお勧めします。
