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日本の永住権を「キャンセル」したい時どうする?家庭の事情や帰国に伴う手続きと注意点

作成者: FESO|Jun 2, 2025 6:05:29 AM

日本の永住ビザ(永住者の在留資格)は、多くの外国人にとって憧れのステータスです。期間の制限なく日本に住み続けられ、就労活動も自由、社会的な信用も高い。しかし、人生は予測不能なものです。家庭の事情、母国への帰還、別の国への移住など、様々な理由で「もう日本に住まない」「永住ビザを維持する必要がなくなった」と考える時が来るかもしれません。

「せっかく取得した永住ビザだけど、もういらない…」 「日本を離れることになったけど、永住ビザはどうなるの?」

 

この記事では、日本の永住ビザを「キャンセル」したい、あるいは日本を離れることになった際に、どのような手続きが必要になるのか、そして知っておくべき注意点について、行政書士の視点から詳しく解説します。正確には「キャンセル」という手続きは存在しませんが、永住ビザを維持しない、または手放すための方法を見ていきましょう。

 

永住ビザの「キャンセル」とは? – 主なケースと法的な解釈

「永住ビザをキャンセルする」という直接的な手続きは、日本の入管法には明記されていません。しかし、実質的に永住者の在留資格がなくなる状況はいくつか存在します。主なケースは以下の通りです。

  1. 1: 自己都合による永住者の在留資格の放棄(永住者としての離脱)
  2. 2: 再入国許可(みなし再入国許可を含む)期間内に出国し、期間内に日本に戻らないことによる失効
  3. 3: 在留カードの更新をしないことによる失効
  4. 4: 強制退去、または資格取消しによる永住権の喪失
  5. 5: 日本に帰化した

これらのケースについて、詳しく見ていきましょう。

 

ケース1:自己都合による永住者の在留資格の放棄(永住者としての離脱)

これは、最も能動的に永住ビザを手放したいと考える場合の選択肢です。

どのような時に利用するか

  • 完全に日本から出国し、将来的に日本に戻る意思が全くない場合。
  • 別の国に移住し、その国の永住権や国籍を取得するため、日本の永住ビザが不要になった場合。
  • 精神的・経済的な負担を感じ、日本の永住者としての義務(納税や社会保険料の支払いなど)から解放されたい場合。

手続きの概要

明示的に「永住者の在留資格を放棄する」という手続きは定められていませんが、実務上は、「在留資格の変更(永住者から別の在留資格へ)」を行う方法は考えられますが、永住者から他の在留資格に変更することは想定されておりませんので、個別判断によるところとなります。或いは「再入国許可を得ずに出国する」ことで、永住者の地位を失うことになります。

ただし、日本の入管庁に対して、明確に「永住者としての地位を放棄したい」旨を申し出ることは可能です。この場合、法務大臣がその申し出を受理し、在留資格を取消す形になる可能性があります。ただし、これは非常に稀なケースであり、通常は以下の「再入国許可の失効」や「再入国許可を取得せずに出国する」方法が実質的な放棄となります。

 

ケース2:再入国許可期間内に出国し、期間内に日本に戻らないことによる失効

これが、永住ビザを「キャンセル」する最も一般的で、かつ意図的に行われる方法です。

どのような時に利用するか

  • 一時的に日本を離れる予定だったが、家庭の事情や新しい仕事の関係で、予定より長く海外に滞在することになった場合。
  • 明確に日本を離れて自国や他国に移住することを決めた場合。

手続きの概要と注意点

日本の永住者であっても、一度日本から出国すると、原則として再入国許可(またはみなし再入国許可)が必要です。

  • みなし再入国許可: 出国から1年以内に日本に戻る場合は、特別な手続きなく「みなし再入国許可」で再入国が可能です。
  • 通常の再入国許可: 1年を超えて日本を離れる場合は、事前に地方出入国在留管理局で通常の再入国許可を得る必要があります。永住者の場合、最長で出国の日から5年間有効な再入国許可を得ることができます。

注意点:

  • もしこの「再入国許可の有効期間内」に日本に戻らなければ、永住者の在留資格は自動的に失効します。これが、実質的に永住ビザを「キャンセル」する最も確実な方法となります。
  • 有効期間を過ぎて日本に戻ろうとしても、永住者の資格は失われているため、原則として再入国はできません。再度、日本へのビザを申請し直す必要があります。

 

ケース3:在留カードの更新をしないことによる失効

永住者であっても、在留カードには有効期限があり、原則として7年ごと(16歳未満の場合は16歳の誕生日まで)に更新する義務があります。

どのような時に利用するか

  • 日本での生活を続ける意思がなくなったが、上記のような出国手続きを特にせず、自然に永住ビザの効力を失わせたい場合。

手続きの概要と注意点

在留カードの有効期限が切れる前に更新手続きを行わなければ、その有効期限を過ぎた時点で永住者の在留資格は失効します。

注意点:

  • これは本来のルールに則った行動ではありません。在留カードの更新は「義務」であり、これを怠ると、不法滞在とみなされ、オーバーステイと同様の不利益を被る可能性があります。具体的には、罰則の対象となったり、将来的に日本に再入国することが困難になったりするリスクがあります。
  • したがって、意図的にこの方法で永住ビザの効力を失わせるのは推奨されません。

 

ケース4:強制退去、または資格取消しによる永住権の喪失

これは、あなたの意思に反して永住ビザを失うケースです。

どのような時に発生するか

  • 強制退去: 日本の法律に違反し、一定の罪を犯した場合や、不法な活動を行った場合など、強制退去の対象となります。
  • 資格取消し: 在留資格の取得時に虚偽の申請を行ったことが判明した場合や、永住者としての義務(納税・社会保険料の支払いなど)を著しく怠った場合などに、在留資格が取り消されることがあります。永住者は非常に安定した地位ですが、完全に剥奪されないわけではありません。

注意点

  • これらのケースは、あなたの信用情報に深く傷をつけ、将来的に日本への入国や他の国へのビザ申請にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 

ケース5:日本に帰化した場合の喪失

日本国籍を取得すると同時に現在の国籍を離脱することになります。つまり外国籍ではなくなりますので、在留資格を保持することができなくなります。帰化の日から14日以内に,法務大臣に対して在留カード又は特別永住者証明書を返納しなければなりません(出入国管理及び難民認定法19条の15,日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法16条)。返納方法につぃては,住居地を管轄する地方出入国在留管理局・支局、出張所に直接持参し,帰化者の身分証明書の写しを添えて返納していただくか,帰化者の身分証明書の写しを同封の上,下記の返納先に送付して返納してください。期限内に返納しないと罰金に処せられることがあります。なお,在留カード又は特別永住者証明書とみなされてぃる外国人登録証明書についても同様です。

 

永住ビザを手放すことの「本当の」意味と影響

永住ビザを手放すということは、単に手続きを終えること以上の意味を持ちます。

  • 日本での「信用」の喪失: 永住者として築き上げた日本での社会的な信用(住宅ローン、クレジットカード、ビジネスなど)は、永住ビザを失うことでゼロに戻るか、マイナスの状態になる可能性が高いでしょう。
  • 将来の再来日の困難化: 一度永住ビザを失うと、再び日本に住みたいと考えた場合でも、一からのビザ申請となり、永住者としての特別な優遇はありません。むしろ、過去の在留状況と永住者を失った経緯と理由について詳細な説明を求められることが想定されます。このことは審査がより厳しくなることを意味します。
  • 家族への影響: 永住者であるあなたが日本を離れることで、扶養していた家族の在留資格にも影響が出る可能性があります。

まとめ:慎重な判断と適切な手続きを

永住ビザは、あなたが日本で培ってきた努力と信頼の証です。それを手放すことは、人生の大きな転換点となるでしょう。

もし、家庭の事情などで日本を離れることになり、永住ビザを維持する必要がなくなったと感じた場合は、安易な自己判断は避け、必ず専門家にご相談ください。 特に、再入国許可の期限管理は非常に重要です。

私たち行政書士は、永住ビザの取得サポートはもちろん、日本での生活環境の変化に伴う在留資格に関するご相談にも対応しております。永住ビザを維持すべきか、それとも手放すべきか、ご自身の状況に合わせた最適な選択をするためにも、ぜひ一度、お気軽にご連絡ください。あなたの日本での、そしてこれからの人生における選択を、全力でサポートさせていただきます。