
在留資格「家族滞在」の皆さん、またはこれから家族を呼び寄せようと考えている皆さんにとって、ビザの更新・申請の動向は、ご家族の生活基盤に直結する非常に重要な関心事です。
2024年〜2025年にかけて、日本の在留資格制度全体で「社会保障の公正な利用」と「経済的安定性」の審査が厳しくなる傾向が顕著に見られます。家族滞在ビザも例外ではなく、扶養者(親)の状況だけでなく、家族の公的義務の履行についても、より厳しい目が向けられています。
この記事では、2025年9月現在の家族滞在ビザに関する最新の傾向と、申請・更新で特に注意すべき2つの重要ポイントを行政書士の視点から解説します。
1. 厳格化!「医療費・社会保険料の未払い」がビザ更新に直結する時代へ
近年、政府は外国人の中長期在留者に対し、日本の公的医療制度・社会保障制度を公正に利用するよう、監視を強めています。この動きは、家族滞在ビザの審査に大きな影響を与えています。
【最新の傾向】
中長期在留者に対して、社会保険料や医療費の未納・未払いがある場合、在留資格の更新を認めないという方針が強化されています。
- 医療費の未払いがリスクに: 医療機関での高額な治療費などを未払いにした履歴がある場合、再入国拒否や在留更新の不許可リスクが高まります。
- 社会保険料(年金・健康保険)の厳格化: 家族滞在ビザの場合、扶養者(主たる活動者)だけでなく、扶養者を含む世帯全体が、国民健康保険や国民年金に適切に加入し、保険料を滞納なく支払っているかが確認されます。
- 目的: 納税義務や公的制度の健全性を保つ目的がありますが、実質的に「ルールを守らない外国人の在留を認めない」という強いメッセージが示されています。
【対策】 家族全員の公的義務の履行を完璧に! 扶養者が会社の社会保険(厚生年金・健康保険)に加入している場合は、扶養家族も問題なく加入しているか確認しましょう。もし国民健康保険・国民年金に加入している場合は、必ず期限内に納付し、滞納履歴を作らないことが、ビザ更新の最重要課題です。
2. 扶養者の「安定性」と「扶養能力」の審査がより厳しく
家族滞在ビザは、扶養者が家族を日本で経済的に支える能力があることが大前提です。近年、この「扶養能力」に関する審査がより厳しく、実態に即して行われるようになっています。
【最新の傾向】
単に「年収の合計額」だけでなく、収入と支出のバランス、そして扶養者のキャリアの「継続性・安定性」が細かくチェックされます。
- 収入の安定性: 扶養者の収入が、扶養する家族全員(特に日本にいる家族)を養うのに十分な水準であるかが見られます。一般的に、扶養者が増えるほど、要求される年収水準も上がります(例:扶養者1人あたり240万円以上が目安とされることもありますが、明確な基準はありません)。
- 扶養の実態:
- 逆扶養の疑い: 家族滞在ビザを持つ被扶養者(配偶者など)の収入が、扶養者(親)の収入を上回る、あるいは近い水準の場合、「実態として扶養されていると言えるのか?」と疑問を持たれ、ビザの対象外と判断されるリスクがあります。
- 送金の実態: 海外から家族を呼び寄せる場合、扶養者が日本から家族へ生活費を定期的に送金していた記録など、過去の扶養実績が求められることがあります。
- 扶養者のキャリアの安定性: 扶養者が頻繁に転職している、創業間もない会社で働いている、あるいはフリーランスであるなど、キャリアに不安定な要素がある場合、その分、審査が長期化したり、追加の収入証明書類(雇用契約書、預金残高証明など)を求められたりする可能性が高まります。
【対策】
- 収入と支出のバランスの明確化: 預金残高証明書などを提出し、収入に見合った安定した家計状況であることをアピールしましょう。
- 扶養者のキャリアの裏付け: 扶養者が転職したばかりの場合などは、新しい雇用契約書や、会社の安定性を示す資料(決算書など)を提出し、「今後も安定して高収入が得られる見込みである」ことを具体的に説明する理由書を添付することが有効です。
- 被扶養者の就労制限の遵守: 家族滞在ビザを持つ方は、「資格外活動許可」を得ていても、週28時間以内の就労制限を厳守することが大前提です。オーバーした場合は、更新不許可の最大の原因となります。
まとめ:家族滞在ビザの安定は「世帯の総合力」にかかっている
2025年9月現在の家族滞在ビザの審査は、扶養者の経済力だけでなく、世帯全員の公的義務の履行と、日本での生活への真摯な姿勢を総合的に判断する傾向が強まっています。
- 家族全員の保険・年金納付状況を徹底確認すること。
- 扶養者のキャリアチェンジは、慎重な計画と入念な書類準備をもって行うこと。
- 被扶養者は、就労時間を厳守すること。
これらのポイントをしっかりと押さえ、ご自身の状況に合わせた最適な対策を講じることが、家族滞在ビザの安定に繋がります。ご自身のケースで不安がある場合は、どうぞお気軽に私たち行政書士にご相談ください。ご家族皆様の日本での安心した生活をサポートさせていただきます。