日本で外国籍の両親の間に赤ちゃんが誕生した場合、その赤ちゃんも日本に滞在するためには、適切な在留資格を取得する必要があります。新しい家族の誕生は喜ばしいことですが、同時に、速やかに必要な手続きを行うことが大切です。
本稿では、日本で生まれた外国籍の赤ちゃんの在留資格申請について、必要な手続き、提出書類、注意点などを詳しく解説します。
なぜ出生後の赤ちゃんに在留資格が必要なのか
日本は、血統主義ではなく属地主義を採用している国です。つまり、日本国内で生まれたからといって、自動的に日本国籍が付与されるわけではありません(両親のいずれかが日本国籍を有する場合などを除く)。
したがって、外国籍の両親から日本で生まれた赤ちゃんが、引き続き日本に滞在するためには、親の在留資格とは別に、その赤ちゃん自身の在留資格を取得する必要があります。この手続きを怠ると、赤ちゃんが不法滞在となってしまう可能性がありますので、速やかに行う必要があります。
出生後の在留資格取得までの流れ
日本で赤ちゃんが生まれた後、在留資格を取得するまでの一般的な流れは以下の通りです。
- 1.出生届の提出: 赤ちゃんが生まれたら、原則として出生日から14日以内に、市区町村役場に出生届を提出する必要があります。届出の際には、医師または助産師が作成した出生証明書、父母のパスポートや外国人登録証明書(または在留カード)、印鑑などが必要です。
- 2.国籍に関する手続き: 出生届を提出すると、市区町村役場から出生に関する情報が法務省に通知されます。その後、赤ちゃんの国籍に関する手続きを、父母の国籍国の在日本大使館または領事館で行う必要があります。必要な書類や手続きは各国によって異なりますので、事前に大使館・領事館に確認してください。
- 3.在留資格取得許可申請: 赤ちゃんの国籍に関する手続きが完了したら、出生日から30日以内に、地方出入国在留管理局に赤ちゃんの在留資格取得許可申請を行う必要があります。この期間内であれば、特例として日本に在留することが認められています。
- 4.審査: 地方出入国在留管理局で書類審査などが行われます。
- 5.許可・在留カード交付: 審査の結果、在留資格の取得が許可されると、赤ちゃんに在留カードが交付されます。
申請に必要な書類
赤ちゃんの在留資格取得許可申請に必要な主な書類は以下の通りです。ただし、個々の状況によって追加書類が求められる場合がありますので、事前に地方出入国在留管理局に確認することが重要です。
- 1.在留資格取得許可申請書: 地方出入国在留管理局のウェブサイトからダウンロードできます。
- 2.出生証明書: 医師または助産師が作成したもの。市区町村役場に提出したもののコピーでも可。
- 3.父母のパスポートおよび在留カード: 原本を提示し、コピーを提出します。
- 4.父母の外国人登録原票記載事項証明書(または登録原票の開示請求により取得した書類): 以前に外国人登録をしていた場合。
- 5.父母の婚姻証明書: 日本または本国で発行されたもの。日本語訳が必要な場合があります。
- 6.父母の収入を証明する書類:
- 在職証明書
- 給与明細書(過去3ヶ月分程度)
- 源泉徴収票
- 住民税の課税証明書および納税証明書
- 確定申告書の控え(自営業の場合)
- 預貯金残高証明書など
- 7.住民票: 父母および赤ちゃんが記載されたもの。
- 8.その他、入国管理局が個別に求める書類: 例えば、身元保証書や質問書などが求められることがあります。
申請する在留資格の種類
出生した赤ちゃんの在留資格は、原則として父母のいずれかの在留資格と同じものになります。例えば、父親が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持っている場合、赤ちゃんも「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得することになります。
ただし、父母の在留資格によっては、赤ちゃんが同じ在留資格を取得できない場合や、より適切な在留資格を検討する必要がある場合があります。例えば、短期滞在ビザで滞在中に赤ちゃんが生まれた場合などが該当します。
不明な場合は、地方出入国在留管理局に相談し、適切な在留資格について確認しましょう。
申請期間:出生日から30日以内が原則
出生した赤ちゃんの在留資格取得許可申請は、出生日から30日以内に行う必要があります。この期間内であれば、赤ちゃんは適法に日本に在留することができます。
しかし、この期間を過ぎてしまうと、赤ちゃんが不法滞在となる可能性があり、その後の手続きが複雑になることがあります。特別な理由がない限り、必ず期限内に申請を行うようにしてください。
申請における注意点
出生後の赤ちゃんの在留資格申請を行う際には、以下の点に注意が必要です。
- 1.早めの手続き: 出生届の提出や国籍に関する手続き、在留資格取得許可申請は、いずれも期限があります。余裕をもって早めに手続きを開始しましょう。
- 2.書類の不備: 提出書類に不備があると、審査に時間がかかったり、不許可になったりする可能性があります。事前に必要な書類をしっかりと確認し、正確に準備しましょう。日本語以外の書類には、原則として日本語訳が必要です。
- 3.父母の在留状況: 父母の在留資格が失効していたり、在留状況に問題がある場合、赤ちゃんの在留資格申請も影響を受ける可能性があります。父母自身が適法な在留資格を有していることが前提となります。
- 4.個別相談の活用: 申請に関して不明な点や不安な点がある場合は、地方出入国在留管理局の相談窓口や、行政書士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。
- 5.国籍に関する手続きとの連携: 赤ちゃんの国籍に関する手続きと在留資格の申請手続きは並行して進める必要があります。大使館・領事館と入国管理局の双方に連絡を取り、スムーズに手続きが進むように連携しましょう。
- 6.在留カードの受け取り: 在留資格取得が許可されたら、速やかに赤ちゃんの在留カードを受け取りに行きましょう。在留カードは、日本で適法に滞在していることを証明する重要な書類です。
よくある質問
- Q.両親が短期滞在ビザで日本に滞在中に赤ちゃんが生まれました。この場合、赤ちゃんはどのような在留資格になりますか?
- A.短期滞在ビザは、原則として長期滞在を前提としたものではありません。この場合、赤ちゃんが引き続き日本に滞在するためには、例えば、両親のいずれかが就労可能な在留資格に変更するなどの措置が必要となる場合があります。まずは入国管理局に相談し、具体的な手続きについて確認してください。
- Q.出生届を提出する際に必要な書類は何ですか?
- A.一般的には、出生証明書(医師または助産師が作成)、父母のパスポートや在留カード、印鑑などが必要です。ただし、市区町村によって異なる場合がありますので、事前に提出先の役所に確認してください。
- Q.30日以内に申請できなかった場合、どうなりますか?
- A.原則として、出生日から30日以内に申請を行う必要があります。もし特別な理由で期間内に申請できなかった場合は、速やかに地方出入国在留管理局に事情を説明し、指示を仰いでください。遅延理由によっては、不法滞在とみなされる可能性もあります。
- Q.父母の在留資格更新時期と赤ちゃんの在留資格申請時期が重なっています。同時に手続きできますか?
- A.原則として、赤ちゃんの在留資格取得許可申請は単独で行います。父母の在留資格更新手続きとは別に、赤ちゃんの申請を進める必要があります。ただし、状況によっては同時に手続きできる場合もありますので、事前に地方出入国在留管理局に確認してください。
まとめ:新しい家族の未来のために、迅速かつ正確な手続きを
日本で赤ちゃんが生まれた後の在留資格申請は、新しい家族が安心して日本で生活するための第一歩となる重要な手続きです。出生届の提出から始まり、国籍に関する手続き、そして在留資格取得許可申請まで、それぞれの段階で期限が定められています。
本稿で解説した手続きの流れや必要な書類、注意点をしっかりと理解し、迅速かつ正確に手続きを進めるように心がけてください。もし不明な点や不安な点があれば、ためらわずに専門家や入国管理局に相談し、大切な赤ちゃんの未来のために、適切な在留資格を取得しましょう。