
子供の成長と家族滞在ビザ:年齢による影響と在留資格変更のタイミング
日本で就労や留学などの在留資格を持つ外国人が、その扶養する配偶者や子供と共に生活するために取得するのが「家族滞在ビザ」です。このビザは、日本の社会において家族が共に生活する基盤となる重要なものです。しかし、子供は日々成長し、年齢を重ねるにつれて、家族滞在ビザの枠組みだけでは対応できなくなる場合があります。
本稿では、家族滞在ビザで在留する子供の成長が、在留資格にどのような影響を与えるのか、そして、適切な在留資格への変更はいつ、どのようなタイミングで行うべきなのかについて詳しく解説します。
家族滞在ビザの基本的な要件と子供
まず、家族滞在ビザの基本的な要件を確認しましょう。家族滞在ビザは、主には以下の在留資格を持つ外国人の扶養を受ける配偶者または子に与えられます。
- 教授
- 高度専門職、経営・管理
- 研究
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 技能
- 特定技能2号
- 留学
- その他
ここでいう「子」とは、原則として未成年であり、かつ扶養者の被扶養者である実子または養子を指します。この「未成年」という点が、子供の成長に伴い、在留資格を考える上で重要なポイントとなります。
年齢がもたらす家族滞在ビザへの影響
子供が成長し、年齢を重ねることは、家族滞在ビザの維持においていくつかの影響を及ぼします。
- 1.未成年要件: 家族滞在ビザの対象となる「子」は、原則として未成年者です。日本の民法では、18歳をもって成年と定められています。したがって、家族滞在ビザで在留していた子供が18歳に達すると、扶養の必要性がなくなり、その資格を維持することができなくなる可能性があります。
- 2.扶養要件: 家族滞在ビザは、扶養を受けることを前提とした在留資格です。子供が成長し、経済的に自立した場合、または自立できると判断された場合、扶養を受けているとは言えなくなることがあります。例えば、就職して安定した収入を得るようになった場合などが該当します。
在留資格変更のタイミング:いつ、何をするべきか
家族滞在ビザで在留する子供が、上記の理由によりその資格を維持できなくなる、または維持することが適切でなくなる場合、適切なタイミングで他の在留資格への変更手続きを行う必要があります。
- 1.18歳を迎える前: 子供が成人を迎える前に、その後の在留資格について検討する必要があります。就職が内定している場合は「技術・人文知識・国際業務」などの就労可能な在留資格への変更を検討します。変更の手続きは、18歳の誕生日を迎える前に行うことが望ましいです。
2.就職が内定した場合: 日本の企業等への就職が内定した場合は、入社前に「技術・人文知識・国際業務」や「特定技能」などの就労可能な在留資格への変更手続きを行う必要があります。家族滞在ビザでは、原則として就労活動は認められていません(資格外活動許可を得た範囲でのアルバイトは除く)。 - 3.経済的に自立した場合: 18歳未満であっても、就職などによって経済的に自立し、親の扶養を受ける必要がなくなったと判断される場合、家族滞在ビザの要件を満たさなくなる可能性があります。この場合も、自身の活動内容に合った在留資格への変更を検討する必要があります。
在留資格変更の手続き:必要な書類と流れ
家族滞在ビザから他の在留資格への変更手続きは、原則として地方出入国在留管理局で行います。必要な書類は、変更先の在留資格や個々の状況によって異なりますが、一般的には以下のものが挙げられます。
- 在留資格変更許可申請書
- 申請人の写真(指定の規格を満たすもの)
- パスポートおよび在留カード(提示)
- 扶養者の身分関係を証明する書類(戸籍謄本、婚姻証明書など)
- 扶養者の在留資格を証明する書類(在留カードなど)
- 扶養者の収入を証明する書類(在職証明書、源泉徴収票、納税証明書など)
- 変更後の活動内容を証明する書類
- 留学の場合: 入学許可証、在学証明書、学費支弁能力を証明する書類など
- 就職の場合: 採用内定通知書、雇用契約書、会社の概要に関する書類など
- その他、入国管理局が個別に求める書類
手続きの流れとしては、まず必要な書類を収集・作成し、地方出入国在留管理局に提出します。その後、審査が行われ、許可または不許可の結果が通知されます。審査には一定の期間を要するため、余裕をもって申請することが重要です。
注意点:手続きを怠ると不法滞在になる可能性も
在留資格の変更が必要であるにもかかわらず、手続きを怠った場合、不法滞在や不法就労となる可能性があります。
子供の成長に伴い、在留資格の変更が必要になる可能性を常に意識し、適切なタイミングで必ず手続きを行うようにしてください。不明な点や不安な点があれば、早めに地方出入国在留管理局や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
ケース別:在留資格変更の具体例
子供の成長に伴う在留資格変更の具体的なケースをいくつか紹介します。
ケース1:21歳、日本の大学を卒業後、日本企業に就職が内定した場合
- 現状: 留学ビザで在留(元は家族滞在ビザ)
- 今後: 日本企業に就職
- 必要な手続き: 入社前に、就職先の業種や業務内容に応じて**「技術・人文知識・国際業務」**などの就労可能な在留資格への変更申請を行う必要があります。
ケース2:17歳、高校在学中に両親が本国に帰国することになったが、本人は日本に残って就学を続けたい場合
- 現状: 家族滞在ビザで在留
- 今後: 親は本国に帰国、本人は日本で高校卒業まで就学を希望
- 必要な手続き: 親の扶養を受けられなくなるため、**「留学」**の在留資格への変更を検討する必要があります。その際、学費や生活費の支弁能力を証明する必要があります。
まとめ:子供の成長を見据えた適切な在留管理を
家族滞在ビザで日本に在留する子供たちは、日本の社会の一員として成長していきます。その成長の過程で、年齢や進路、経済状況などが変化し、家族滞在ビザの枠組みだけでは対応できなくなる時期が必ず訪れます。
大切なのは、子供の成長を常に意識し、適切なタイミングで在留資格の変更手続きを行うことです。手続きを怠ると、不法滞在という深刻な事態を招きかねません。
本稿が、家族滞在ビザで在留する子供を持つ外国人の方々にとって、在留資格に関する正しい知識を深め、適切な行動をとるための一助となれば幸いです。不明な点や不安な点があれば、ためらわずに専門家や入国管理局に相談してください。子供たちが安心して日本で成長していけるよう、適切な在留管理を心がけましょう。