
在日外国人の方々のビザ手配を専門とする行政書士として、この度、「経営・管理」ビザに関する重要な変更点についてご案内するため、本記事を執筆いたしました。
最近の報道や法務省の動向により、「経営・管理」ビザの取得要件が大きく見直される見通しとなり、既にビザをお持ちの経営者の方々や、これから日本での起業を目指す外国人の方々の間で不安が広がっています。当事務所では、これらの変更が皆様のビジネスや生活に与える影響を深く理解し、適切な対応策を共に検討してまいります。
「経営・管理」ビザの主な変更点と背景
現在検討が進められている「経営・管理」ビザの要件変更について、資本金要件が現在の500万円以上から3,000万円以上へと大幅に引き上げられ、同時に1名以上の常勤職員の雇用が必須、更に、経営・管理経験3年以上または同分野の修士以上に相当する学位が必要となる方向で検討が進められており、これらの変更は年内の施行を目指して調整が進められていると報じられています。
また、これに加えて、2025年7月17日からは、更新申請時に「直近の在留期間における事業内容・経営または管理活動の説明書」の提出が新たに義務化されました。これは、事業の実体性や継続性に関する実績を文書で具体的に説明することを求めるもので、言わば「事業活動報告書兼プチ事業計画書」のような資料が必要になります。
なぜこのような厳格化が進められているのでしょうか?
その背景には、主に以下の理由が挙げられます。
- 制度の悪用・乱用への対策:現行の要件が比較的緩やかであったため、事業実体のない「ペーパーカンパニー」の設立や、資本金の一時的な用意、さらには民泊経営などを口実とした日本への移住目的での利用など、制度の抜け穴を悪用する事例が報告されていました。出入国在留管理庁は、ビザの信頼性と透明性を高めることを目的としています。
- 国際水準との比較:日本の「経営・管理」ビザの資本金500万円という要件は、アメリカ(約3,000万~4,500万円)、韓国(約3,000万円)など他国と比較して「格安」と指摘されており、約25年間据え置かれていました。国際的な基準に合わせる意図もあります。
- 在留外国人の増加:特に中国籍の「経営・管理」ビザ保持者が急増しているという統計データもあり、経済状況の変化やゼロコロナ政策への反発などから、海外移住を意味する「潤(ルン)」という隠語が広がるなど、日本への移住希望者が増えている状況も背景にあります。
変更がもたらす影響と対応策
今回の厳格化は、申請を検討している新規起業家だけでなく、既にビザを保有している外国人経営者にも影響を及ぼす可能性があります。
2.既存のビザ保持者への影響:法務省の公式見解では、現時点で既存の経営管理ビザ所持者に「資本金増額」などの追加義務が課される可能性は極めて低いとされています。しかし、次回更新時以降に新基準が適用される可能性もゼロではないと見る向きもあります。特に、事業の実体性が厳しく審査されるため、事業計画と実際の経営活動の整合性、日々の売上や人員に関する具体的な数値の整理がより一層求められます。
3.外国人を雇用する企業への影響:企業側も、「経営・管理」ビザでの採用を前提とした内定が出せなくなる可能性や、ビザ審査の長期化による人員計画への影響に注意が必要です。外国人従業員のビザ取得状況と要件の最新情報を常に把握することが求められます。
行政書士からのアドバイス
このような変化の中で、「経営・管理」ビザの取得や更新を成功させるためには、より周到な準備と専門的な知識が不可欠です。経営管理の在留資格取得の申請を一言で説明するならば、「入国管理局に対する、より蓋然性の高い事業計画の企画及び立案提示と、その立証をする申請」といえます。換言すれば書面だけをもって行うビジネスプランコンテストのプレゼンに近いとも言えるでしょう。ただしプランであっても、実際に事業として立ち上げることになりますので、既に取引予定先との基本合意を証明するための基本契約書や商談中の各種リストや見積書、合意書による説目や、物品資材などの搬送ルートの確保状況や掛かるコスト見積、各業者との商談進捗状況を証明することに繋がる資料など、単なるプレゼンではない点は、最も重視しておく必要があります。
- 事業計画の具体性と安定性:申請時には、事業の安定性・継続性を詳細に説明する事業計画書が最も重要になります。会社の資本金の出所を明確にし、各種資料で裏付けを行う必要があります。
- 事業所の確保:レンタルオフィスの短期契約や、居住スペースと事業スペースが明確に区分されていない自宅兼事務所は、審査が厳しくなる傾向があります。可能な限り、事務所と自宅を別にすることをお勧めします。
- 在留状況の良好性:資格外活動許可の範囲を超えて働いたり、過去に虚偽の申請をしていたりするなどの「素行不良」と判断される場合、不許可になる可能性があります。留学生からの変更の場合、学業成績や出席率も審査対象となることがあります。
- 早期の相談と準備:不明点や複雑なケースに直面した場合は、信頼できる申請取次行政書士などの専門家に早めに相談することが、将来のリスクを大きく減らすことにつながります。当事務所のようなビザサポートを専門としている行政書士事務所は、許可の可能性を高めるための最適な申請戦略を立て、書類作成から入管への提出、審査過程での対応まで、一貫してサポートします。
行政書士の選び方
行政書士にビザ申請を依頼する際は、以下の点に注目して事務所を選ぶことが重要です。
- 専門性と実績:「外国人ビザ申請業務を専門的に扱っているか」、「申請取次行政書士」の資格を有しているかを確認しましょう。長年の経験や多数の案件処理実績は、入国管理局の審査傾向や個別事案への対応ノウハウが蓄積されている証拠です。
- 料金体系の明確さ:どのようなサービスにいくらかかるのか、総額でどの程度の費用が見込まれるのかを、書面で明確に提示してくれる事務所を選びましょう。極端に安価な料金設定の事務所には注意が必要です。
- 説明の分かりやすさとコミュニケーション:専門用語を多用せず、手続きの流れやリスク、メリット・デメリットなどを平易な言葉で説明してくれるか、親身になって相談に応じてくれるかを見極めましょう。
- 不許可時の対応方針:「100%許可が取れる」といった安易な保証をする事務所には注意し、万が一不許可になった場合の料金の取り扱い(返金や再申請サポートの有無)についても事前に確認することが大切です。
- 実際の相談:ウェブサイトや広告の情報だけでなく、実際に事務所に足を運び、直接話を聞くことで、雰囲気や担当行政書士の人柄、専門知識の深さを肌で感じることができます。
今回の制度変更は、日本で真剣にビジネスを展開しようとする外国人起業家にとっては、制度の信頼性が高まるというメリットも期待できます。一方で、ハードルが高くなることも事実です。
複雑な手続きでお困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。皆様が安心して日本での事業活動に取り組めるよう、全力でサポートさせていただきます。