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「経営管理ビザ待ち」の会社へ外国人材を採用する際の致命的なミスと戦略

作成者: FESO|Oct 10, 2025 3:44:37 AM

こんにちは。新規法人と技術者の採用タイミングのズレに関して先日、新規で会社を設立したばかりの外国人経営者の方から、このようなご相談を受けましたので共有いたします。

 

1. 事例の概要:新規法人と技術者の採用タイミングのズレ

【事例】 外国人経営者Aさんが、自らの「経営・管理」ビザ(COE)を申請中である自身の日本法人で、本国から呼び寄せたい優秀な外国人エンジニアBさんを「技術・人文知識・国際業務」(技人国)ビザで雇用したいと考えていました。

Aさんの会社は設立されたばかりで、Aさん自身もまだビザの許可待ちの状態です。そこでAさんは、「早く事業をスタートさせるため、Aさんのビザが許可される前に、Bさんの技人国ビザ申請を入管に提出してしまおう」と考えました。

 

2. なぜこの行動は「致命的なミス」となりうるのか?

Aさんのように「時間が惜しいから」と、経営管理ビザの許可を待たずに社員の就労ビザを申請することは、理論上は可能ですが、審査の実務上、極めてリスクが高いため、私たちは推奨しません。

この行動が「致命的なミス」となりうる理由は、入国管理局(入管)の審査の順序と論理にあります。

(1) 会社の「安定性・継続性」が証明できない

技人国ビザの審査では、申請者(Bさん)の学歴や職務内容だけでなく、雇用する会社(Aさんの法人)が安定的・継続的に事業を運営できる能力を強く求められます。

しかし、Aさんの会社は設立したばかりで、さらに代表者であるAさん自身がまだ「合法的な経営者」として入管から認められていません(経営管理ビザが未許可のため)。

  • 入管の疑問: 「この会社は、そもそも代表者が日本で経営活動を行う許可を得ていない状態で、どうやって社員を安定的に雇用し、給与を払い続けるのか?」
  • 結果: Bさんの技人国ビザ申請は、「会社の基盤が不安定すぎる」という理由で審査がストップするか、不許可になるリスクが非常に高まります。

(2) 審査が「ダブルで長期化」する

同時期に申請した場合、入管はBさんの技人国ビザを審査する前に、必ずAさんの経営管理ビザの審査を優先します。

Aさんのビザ審査に時間がかかればかかるほど、Bさんの審査は完全に棚上げ(ストップ)されます。このため、Bさんの審査期間はAさんの審査期間に依存してしまい、結果的に「両方のビザの審査が長期化する」という負の連鎖を招きます。

 

3. この事例から学ぶべき「最適な戦略」

では、事業のスタートを急ぐ外国人経営者は、このような状況でどう戦略を立てるべきでしょうか。成功率を高めるための唯一の道は、「許可の確実性」を最優先にした段階的アプローチです。

戦略1:経営管理ビザの許可を待つ (最も確実)

  • 最適なタイミング: Aさんが法務局から「経営・管理」ビザの在留カードを受け取った直後
  • 理由: Aさんが合法的な経営者として認められた事実を証明できるため、Bさんの技人国ビザ審査において「会社の安定性」がクリアされ、審査がスムーズに進みます。
  • 提出書類: Bさんの技人国ビザ申請書に、Aさんの新しい在留カード(「経営・管理」ビザ)のコピーを添付することで、会社の基盤が整っていることを明確に証明できます。

戦略2:設立直後の事業計画を「一人でスタートできる」形にする

  • 重要ポイント: Aさんは、Bさんが入社するまでの事業計画を、Aさん自身と日本国内の協力者(会計士など)だけでスタートできる形で立案し、その計画を法務局へ提出する必要があります。
  • 理由: 最初からBさんの存在を事業の必須要件として組み込んでしまうと、Bさんのビザが不許可になった場合、Aさんの経営管理ビザまで「事業の継続が不可能」として不許可になるリスクがあります。

 

まとめ:ビザ申請は「急ぐ」より「確実性」を優先せよ

外国人経営者にとって、人材確保は時間との勝負ですが、ビザ申請は「急ぐこと」よりも「許可の確実性」を最優先しなければなりません。

この事例のように、経営者のビザが未許可の状態で社員のビザを申請すると、結果として両方のビザが不許可になったり、審査期間が異常に長引いたりするリスクがあります。

経営管理ビザの許可 = 社員のビザ申請のスタートライン

という原則を理解し、最短距離でビザを取得するためにも、私たちは専門家への相談と、計画的な申請スケジュールの立案を強く推奨します。事業の安定的な成長のためにも、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。