日本の国籍を取得し、日本人となる「帰化申請」。永住権と並び、日本に深く根ざすための重要なステップです。しかし、法律や運用基準は常に変化しており、つい数年前の情報が、今はもう古くなっていることも珍しくありません。
「最近、帰化申請の審査が厳しくなったって本当?」 「手続きで何か変わったことはある?」
このように、帰化を検討している方が抱く疑問に答えるため、この記事では、2024年以降の帰化申請における最新の動向と、特に知っておくべき変更点や注意点を行政書士の視点から解説します。
1. 審査が厳格化?公的義務の履行がより重視される傾向
近年、帰化申請の審査において、特に「公的義務の履行」が、これまで以上に厳しく、かつ詳細に確認される傾向にあります。
- 税金・社会保険料の納付状況: 帰化申請では、所得税、住民税、年金、健康保険料などを適切に納付しているかどうかが最も重要です。最近の傾向として、過去の支払い状況がより長期にわたって厳しくチェックされるようになっています。
- 変更点と注意点:
- 過去に未納や滞納の履歴がある場合、たとえ現在は完納していても、その理由や経緯を詳細に説明する必要があります。単に「支払いました」というだけでなく、「なぜ滞納したのか」「どのように改善したのか」を証明することが求められます。
- 国民年金: 2024年現在、国民年金は過去2年分を完納していることが原則ですが、法務局はそれ以前の支払い状況についても確認することがあります。
- 国民健康保険: 保険料の滞納がないか、過去の支払い状況を細かく見られます。
- 就労系の在留資格: 技術・人文知識・国際業務の在留の方が申請する場合には、これまで以上に業務内容を厳しく確認され審査が行われます。地方法務局によっては、相談予約の段階で業務内容を詳細に説明する資料を作成して持参するよう要請されることもあります。もし、この審査を経て技術・人文知識・国際業務の在留資格の該当性なしの判断が下されますと、次回の在留期間の更新も不許可となるリスクが生じますので慎重な対応が必要になります。
2. 「特定技能」ビザ保有者の帰化申請が可能に!
2024年から特定技能ビザの対象分野が拡大されるとともに、特定技能2号ビザを持つ外国人が帰化申請を行えるようになりました。これは、これまでの運用では帰化が難しかった特定技能保有者にとって、大きな変更点です。
- 変更点と注意点:
- 対象: 特定技能1号ビザではなく、「特定技能2号」のビザを持っている方が対象となります。
- 在留期間: 永住申請と同様に、原則として引き続き5年以上日本に在留していることが求められます。特定技能1号から2号への切り替え期間も含めて計算します。
- 生活の安定性: 安定した収入や生活基盤があることが、帰化申請の重要な要件となります。
この変更は、特定の分野で日本の経済を支える外国人材が、より長期的に日本に定着しやすくなることを示しており、非常に画期的な動きです。
3. 「素行要件」の判断基準がより厳格に
「素行が善良であること」という要件は、これまでも帰化の前提でしたが、その判断基準がより厳格になっています。
- 交通違反: 軽微なスピード違反や駐車違反でも、その回数が多かったり、悪質な違反があったりする場合、不許可の要因となる可能性が高まっています。過去5年間の交通違反歴が、厳しくチェックされます。
- 犯罪歴: 過去の犯罪歴は、たとえ軽微なものであっても、審査に非常に大きく影響します。
- 社会との関わり: 地域社会への貢献度や、近隣住民とのトラブルがないかなど、日本社会に溶け込んでいるかどうかも間接的に判断されます。
4. 帰化申請手続きのデジタル化・簡素化の兆し
近年、日本の行政手続き全般でデジタル化が進んでおり、帰化申請にもその動きが見られます。
- オンラインでの情報提供: 法務省や地方自治体のウェブサイトでは、帰化申請に関する情報がより充実し、分かりやすく提供されるようになっています。
- 将来的にはオンライン申請も?: 現時点では帰化申請の完全なオンライン化は実現していませんが、今後は申請手続きの一部がオンラインで可能になるなど、より簡素化されていく可能性があります。
まとめ:帰化は「日本の社会の一員」となるための覚悟を問われる
2024年以降の帰化申請の動向は、単に書類上の要件を満たすだけでなく、「日本の社会の一員として、責任を果たし、誠実に生活していく覚悟」があるかどうかを、より深く問われるようになっていることを示しています。
特に、公的義務の履行や素行要件については、過去の行動が正直に審査されます。もし過去に不安な点がある場合は、自己判断せず、必ず専門家に相談することが重要です。
私たち行政書士は、帰化申請の最新の動向を常に把握し、あなたの状況に合わせた最適なアドバイスを提供しています。複雑な書類準備から、法務局での面談対策まで、あなたの帰化申請を全面的にサポートいたします。
帰化は、あなたの日本での人生をさらに豊かにする、大きな一歩です。ご自身のケースで帰化が可能か、そしてどのような準備が必要かなど、ご不明な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。